平成28年度はこれまでに実施した調査の結果から得た考察を整理、統合した。また糖尿病予防教育プログラムの検討上、追加で分析が必要になると考えられた観点、特に健診結果の指摘の有無と翌年の保健行動、食生活関連保健行動の未実践者の行動変化に関係する要因などを検討した。 健診結果の指摘の有無と翌年の保健行動の関連については、インターネット調査において、脂質代謝、糖代謝、血圧の指摘事項あり者は保健行動のうち「適正体重維持」においてのみ、指摘事項なし者より実施者割合が少なかった。また肥満の指摘事項あり者は「適正体重維持」「腹八分目」において、指摘事項なし者より実施者割合が少なかった(χ2検定、p<0.05)。加えて、食生活関連保健行動未実践者を翌年の保健行動実践有無にて区分し、属性、日常いらだち事尺度、レジリエンス尺度、コーピング特性簡易尺度得点平均値を比較した結果、翌年「腹八分目」について、「年齢」は未実践群より実践群が高く、「月間残業時間」「日常いらだち事尺度得点」は実践群より未実践群が高い結果を示した(t検定、p<0.05)。 後ろ向きコホート調査では、保健行動実践有無と肥満有無で区分した4群における、2年分の定期健診結果変動値の平均における差異を検討した。結果、保健行動「間食しない」における「体重」「GOT」「GPT」のみ有意であった(一元配置分散分析、p<0.05)。 これらのことから、日常の出来事とストレス回復力に応じた糖尿病予防教育を検討する上では、保健行動「適正体重の維持」に焦点をあて、特に「腹八分目」の実践を促進できるよう「残業時間」調整や「日常いらだち事」が軽減できるようストレスマネジメントの啓発が重要であると考えられた。また、肥満者が「間食をしない」よう支援することが「適正体重の維持」に繋がる可能性が示唆された。
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