研究課題/領域番号 |
25870004
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
米田 剛 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30619086)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Navier-Stokes方程式 / 特性曲線法 / 微分幾何学 / 有限要素法 / Taylor-Green渦 / 剥離現象 |
研究概要 |
今までのNavier-Stokes方程式研究では「関数空間やそれに関連するノルム不等式」が主な解析道具であった。しかしそれでは「ある点の近くでの流体の局所的振る舞い」などといった局所解析がほぼ不可能である。そこで本申請者は今まであまり誰も着目してこなかった「流線や流跡線及び圧力の等高線(等高面)の集中度合いや曲率などの幾何学的性質」などを使った新しい流体数学解析を展開した。より具体的には、「粘性流体の境界付近における局所的振る舞い」を数学的に明らかにするために、本申請者は剥離現象が起きるための必要十分条件を表しているODEを発見し、そこから剥離が起きるための流体の幾何学的振る舞いを追求した。剥離現象を純粋数学的に研究した論文としてはMaとWangの2003年の論文(Discrete and continuous dynamical systems)が有名であるが、その彼らの研究結果をより洗練化したとも言えよう。更に、本申請者と研究協力者C-H. Chan M. Czubakは、ユークリッド空間上の流体運動だけではなく、球面などの多様体上の流体運動に対する剥離条件も見出した。この場合は微分形式やリーマン計量という幾何学的概念を本質的に用いている。 流体粒子の旋回運動や集中運動をみるのに有効な軸対称流の数値実験を、流体の数値解析に詳しい早稲田大の野津氏と進めた。Taylor-Green渦に近い構造を持つ軸対称流に着目し、そこから「旋回が、最大値を達成する位置を軸に近づける」効果や「軸上の鞍点付近で流体粒子の速度が上がる」といった効果を見出すことが出来た。この二つ効果を純粋数学的に考え進めること、上述の効果がより顕著に現れる速度場の模索や軸対称以外の場合の追求などが今後の課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書では、今まであまり誰も着目してこなかった「流体運動の微分幾何学的考察」を大きな目標の一つとしており、その目標が順調に進展しているといえよう。その計画を強力に執行するために研究協力者としてすでに名前をあげていたChan氏や野津氏との研究が当初予定通りに進み、Chan氏との研究はすでに論文としてまとめて投稿している。野津氏との研究に関しても、今年度中に論文としてまとめ、投稿する予定である。一橋大の斉木氏(申請時点では北大所属であった)との研究トピックも順調に進んでおり、渦度方向の変化度合いに着目した乱流数値計算を今年度中に執行し、その数値結果から新たな流体力学的知見を得る予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度は、Taylor-Green渦と近い構造を持つ軸対称流に対する旋回運動や集中運動の数値計算を早稲田大の野津氏と進めた。今後はTaylor-Green型の渦だけではなくBurgers型の渦、或いは歪んだ軸を持つ(軸対称ではない)渦などを詳しくみていく必要があろう。そのような状況下において「旋回が、最大値を達成する場所を軸に近づける」効果や「軸上の鞍点付近で流体粒子の速度が上がる」といった効果がどのように変化していくかを詳しくみていく予定である。本申請者と研究協力者C-H. Chan氏 M. Czubak氏は、球面などの多様体上の流体運動に対する剥離条件を、微分形式やリーマン計量という微分幾何学的概念を用いて見出したが、これらは全て2次元流の考察である。今後は、今まであまり誰も追求していない3次元流の剥離現象を追求していく予定である。一橋大の斉木氏(申請時点では北大所属であった)と渦度方向の変化度合いに着目した乱流数値計算を、今年度中に執行し、その数値結果から新たな流体力学的知見を得る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
経費を適切に執行できたため、9272円の節約が出来た。 流体研究関連の書物の購入にあてようと計画している。
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