研究課題/領域番号 |
25870006
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
脇田 督司 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80451441)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | デトネーション / パルスデトネーションエンジン |
研究概要 |
本研究では,当該年度において,あらゆるターゲットガスに適用可能な大直径デトネーション波生成の一般則を導くことを目的として,プリデトネータ直径および平板流路幅を変更し,円筒デトネーション波の生成条件に及ぼす流路幅とドライバーガス充填半径の影響を実験的に調べた.流路幅を10 mmに固定しプリデトネータ直径を10 mmから20 mmに変更すると,プリデトネータ出口におけるデトネーション波の再開始現象が,一度の衝撃波の衝突によって円筒デトネーション波が生成される直接開始から,複数回の反射を繰り返して円筒デトネーション波に遷移する間接開始になる現象が確認された.この時,ターゲットガスに対するドライバーガスの必要過供給半径が大きくなるが,これは再開始現象が直接開始から間接開始になることにより円筒デトネーション波が形成される位置が半径方向外側に移動するためと考えられる.またプリデトネータ直径を20 mmに固定し,流路幅を10 mmから15 mmに変更し流路幅がターゲットガス内の円筒デトネーション波伝播に与える影響を調べた.流路幅を10 mmで行った過去の研究から,ターゲットガスの伝播限界は円筒波のセルサイズが流路幅と等しい場合と考えられた.しかし,流路幅を15 mmに変更した場合の伝播限界はセルサイズと流路幅が等しくなった時ではなく,セルサイズが約10 mmの場合であり,円筒デトネーション波の伝播限界に流路幅は無関係であることが強く示唆された.現在の流路幅の伝播限界セルサイズ10 mmはターゲットガスの窒素希釈率に換算すると約60%である.この希釈率付近は希釈率に対するセルサイズの変化が大きいため,より低希釈率で伝播限界を判断できるようにするため,来年度はターゲットガス領域のみ流路幅2~3 mmになるような中子を製作し,セルサイズの円筒波伝播限界に与える影響を調査する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では,下記の知見が得られた. プリデトネータと燃焼器の接続部を可換式とし,プリデトネータ直径と流路幅をパラメータとして,円筒デトネーション波の直接開始条件を明らかにした.直接開始は円筒デトネーション波の伝播限界条件付近では,プリデトネータ直径と流路幅が等しい場合に起こり,プリデトネータ直径が流路幅よりも大きい場合は間接開始となることが分かった. 円筒デトネーション波の伝播はドライバーガスとターゲットガスの境界面における初期窒素濃度勾配の影響を受ける.当該年度では汎用熱流体解析ソフトFluentを用いた3次元混合計算を行いその影響を評価した.その結果,境界面における濃度勾配はドライバーガスの過供給量によらず約80 mmの幅を有していることが分かった.よって必要なドライバーガス過供給量は上述の円筒デトネーション波の成立距離に80 mmを加えたものと考えることが出来る. プリデトネータ直径を20 mmに固定し,流路幅を10 mmから15 mmに変更し流路幅がターゲットガス内の円筒デトネーション波伝播に与える影響を調べた.流路幅を10 mmで行った過去の研究から,ターゲットガスの伝播限界は円筒波のセルサイズが流路幅と等しい場合と考えられた.しかし,流路幅を15 mmに変更した場合の伝播限界はセルサイズと流路幅が等しくなった時ではなく,セルサイズが約10 mmの場合であり,円筒デトネーション波の伝播限界に流路幅は無関係であることが強く示唆された. 以上の知見が得られたことにより,当該研究はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の結果,円筒デトネーション波の伝播限界が流路幅に無関係であることが強く示唆された.よって,今後は伝播限界が円筒デトネーション波の曲率によって決定されるとの仮説を立て,それを実証することとする.そのために円筒デトネーション波が伝播する流路幅を2~3mmに設定可能な実験装置を製作する.この流路幅で実験を行うことにより,伝播限界が流路幅で決定されている場合,伝播限界セルサイズは流路幅と等しい2~3 mmとなる.逆に曲率によって決定される場合,伝播限界セルサイズは現在と同様の10 mm付近になるはずである.この実験に際し,円筒燃焼器中心部の平板間隔が2~3 mmだと,ドライバーガス条件でも円筒デトネーション波が起爆しないという問題が生じる.そこで解決策として中心領域のみ平板間隔が10 mm,外周領域の平板間隔が2~3 mmとなるようなドーナツ状中子を製作するものとする.なお,実験方法に関しては当該年度からの変更は想定していない. また,当初計画通り,流路幅の変化が円筒波から円環波の遷移に与える影響を調べるため,円筒形状燃焼器ないに円盤中子を設置し,円筒波から円環波への遷移が起こる反射体コーナーを再現する.この実験では流路幅は円筒流路における円筒波の伝播限界によって決定し,反射体と燃焼器の距離および円筒形状燃焼器の内径をパラメータとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
流路幅15 mmの燃焼器を用いて円筒デトネーション波の伝播限界におけるセルサイズを調査した結果,流路幅と伝播限界のセルサイズに相関がないことが示唆された.当初案ではさらに流路幅の大きな20 mmスペーサー用フランジの製作を予定していたが,この条件では目標セルサイズにおける窒素希釈率が大きくなりすぎて有意なデータ取得が困難になる.よって今後の推進方策で述べたとおり,流路幅とセルサイズに相関がないことを示すためには,より流路幅が小さな条件で実験を行うことが妥当であると判断した. 次年度では20 mmスペーサー用フランジにかえて流路幅を2~3mmに設定可能なドーナツ状平板を製作する.
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