本研究では,申請者が提案するパルスデトネーションエンジン用イニシエータによる大直径デトネーション波生成の一般則を導くことを目的として,本イニシエータ内を伝播する円筒デトネーション波の伝播条件,および円筒デトネーション波から円環デトネーション波への遷移条件を調査した. 昨年度の成果により,円筒デトネーション波の伝播条件(伝播限界)は流路幅とセルサイズの比(w/lambda)によらず伝播する円筒波の曲率とセルサイズの比(lambda/r)によって決定されることが示唆された.当該年度ではこれを確認するため,昨年度採用した10 mmと15 mmの円筒流路幅に加えて,3 mmの流路幅を実現するスペーサを製作し伝播実験を行った.ターゲットガス(水素・酸素量論混合気を窒素希釈)の窒素希釈率が50 %と55.6 %の間に円筒デトネーション波の伝播限界があり,その伝播限界は流路幅に依存しないことが明らかになった.伝播判断位置はr = 160 mm,窒素希釈率50 %~55.6 %のセルサイズは約10 mmであることより,伝播限界を決める閾値lambda/r は1/16である. 当初計画通り,新たに内径300 mm,燃焼器長150 mmの燃焼器を製作し,寸法の異なるアルミニウム製の中子を挿入することにより,流路形状(円筒流路幅wおよび円環流路幅l)が円筒デトネーション波から円環デトネーション波への遷移に与える影響を調査した.結果,水素/空気量論混合気(lambda = 10 mm)に対しては,w/l > 0.5,l > 35 mm,lambda > 3.4l mmを満たすように流路を設計することで,反射体下流まで円環デトネーション波を伝播させることが可能であることが分かった.
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