本研究では,季節的海氷域を利用する高次捕食者の分布が,海氷変動によってどのように影響を与えられるかについて明らかにすることを目的とし,調査を行ったほか,これまでの成果の取りまとめを行った. 流氷期である4月に船からの目視調査を行った結果,2013年4月は流氷密接度が低く,アザラシの発見は少なかった一方で,シャチが目視されたこと,その反対に2014年は流氷が多く残っており,アザラシが多く見られたがシャチの発見がなかったことが明らかとなり,流氷域を利用する高次捕食者と海氷密接度との関係が明らかとなった. また,これまで紋別オホーツクとっかりセンターで保護され,衛星発信器を装着して放獣した個体の回遊データについて解析を行い,個体がよく利用する海域の抽出を行った.この結果,ゴマフアザラシは夏期には上陸場への固執性があること,冬期,流氷が北海道沿岸に来遊すると,海氷密接度が50%以下の海域をよく利用し,流氷上で休息していることが明らかとなった. トドについても回遊データについて解析を行い,北上するタイミングについては,水温がトリガーとなっているのではないこと,また,未成熟個体については北上せずに宗谷海峡周辺海域にとどまっていることを明らかにした. さらに,流氷域で記録したクラカケアザラシの鳴音を解析したところ,ベーリング海やチュクチ海の鳴音パターンと異なることが明らかとなった.これらの成果について学会発表を行ったほか,投稿に向けて論文を準備中である.
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