研究課題/領域番号 |
25870009
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
長嶋 剣 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (60436079)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 氷 / 擬似液体層 / 結晶成長 |
研究概要 |
当該年度では原子間力顕微鏡で氷表面を観察するための環境温度制御装置、観察セルの作成、装置の改良などを行った。原子間力顕微鏡はナノメートル以下の分解能で表面の三次元凹凸観察を行うため、装置を構成する各パーツの熱膨張が非常に問題となる。本装置は室温において約5nm/min以下の熱ドリフトを実現しているが、これをいかに大きなドリフトにすることなく氷観察に必要なマイナス温度を実現するかが高分解能観察の鍵である。 まずは原子間力顕微鏡を温度制御可能なインキュベータ内に設置することで、5±0.5℃の環境で原子レベルでの観察を行うことに成功した。そのインキュベータ内にペルチェ素子を用いた観察セルを使う事でマイナス温度での測定にも成功している。 装置の改良としては、ノイズ低減のために回路・配線等の見直しを行い、テストも兼ねていくつかの観察を行った。まず、溶液中での原子・分子分解能観察が行えていることがわかり、装置は十分に良い状態に保たれていることがわかった。 また、水溶液中での結晶表面近傍における水和構造(水分子密度の粗密)の計測を行うことにも成功した。水和構造に関してはこれまで報告のあるマイカ(雲母)固液界面に加えて、観察面の成長や溶解が伴うアルカリハライド固液界面においてもシグナルが得られた。この結果は装置のノイズレベルが十分に低い事を示していると共に、もし氷表面における擬似液体層が何らかの構造を持っていたとしたらその構造を可視化できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体的な自己評価として、当初の目標であった氷表面を観察するための見通し(温度環境・観察セル)がほぼ立ったことは、おおむね順調に進展していると判断できる。 また、水和構造が得られるほど装置を良い状態にできたことは今後の測定において有用である。ただし、氷表面を原子レベルで観察するところまでは達成できなかったため早い段階で取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
申請した当初と大きな変更はなく、このまま進めていく予定である。 申請書では氷表面上における擬似液体層の形状測定のみをターゲットとしていたが、結晶・水界面における水和構造のシグナルも得られていることから、氷・水の固液界面構造の測定も追加して試してみる予定である。これまで氷・水界面における水分子の構造の測定例はないこと、またその構造が擬似液体層中の水分子の構造と類似する可能性が高い事などから測定意義は非常に大きい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費として計上していた観察用セル作製一式は当初高額になる予定であったが、既に所持していた別目的の観察セルの部品を流用したり、自作することによって大幅に削減され、次年度使用額が発生した。 次年度使用額は物品費として使用する予定である。「理由」で述べた通り次年度使用額が発生したのは物品費を削減することに成功したからであり、本年度は昨年度の知見をもとにより高性能な観察セルを物品費を使用して作製予定である。
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