研究課題
若手研究(B)
ポリコーム群複合体PRC2は、発生・分化の過程で決定される遺伝子発現パターンの維持に必要であり、ヒストンH3の27番目のリジンをメチル化 (H3K27me)することで遺伝子発現の抑制を行う。PRC2による発現抑制の代表例には、HOX遺伝子群の制御やX染色体の不活性化が知られている。しかし、PRC2がどのように多種多様な遺伝子領域を見分けて制御するのか、ヒストンH3の9番目のリジンのメチル化 (H3K9me) を介したもう一つの遺伝子抑制システムとの関係など、PRC2の制御メカニズムは未だ明らかになっていない。そこでPRC2複合体の全貌を明らかにするために、我々が見いだした新規因子を含む全14種類のPRC2構成因子に対して、免疫沈降による精製とその質量分析器を使った同定を行い、PRC2構成因子間の相互作用マトリックスを作成した。その結果、排他的にPRC2複合体に含まれる構成因子と、必ず含まれるを構成因子を見いだすことができ、構成因子を使い分けることでPRC2複合体には少なくとも6種類存在することを見いだした。また、新規PRC2構成因子のゲノム上での作用点を明らかにするためのChIP-seq解析の準備を行い、特異的抗体の整備、クロマチン断片化条件の設定を行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
網羅的な免疫沈降ー質量分析器による解析によりPRC2複合体の構成因子間の関係を明らかにでき、いままで明らかでなかった複数種のPRC2複合体が存在することを明らかにできた。またそれらの機能的違いを明らかにするための実験系、材料を準備することができた。
前年度に準備のできたChIP-seq解析系を用いて、見いだしたPRC2複合体それぞれが、どこでいつ機能しているのかを明らかにする。また排他的にPRC2複合体に含まれる構成因子が、どのようなメカニズムでその排他性が補償されているのかを、結合領域の同定を通じて明らかにする。
PRC2構成因子のChIP-seq解析を行うにあたって、まず綿密な条件検討を行うことを優先したため、最も費用のかかる次世代シーケンサーによる解析の中に次年度となったところがあるため。次世代シーケンサーを用いた解析に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Nat. Struct. Mol. Biol.
巻: 20 ページ: 566-573
doi: 10.1038/nsmb.2532
実験医学
巻: 31 ページ: 1771-1775