我々はこれまでに、有機電荷移動錯体の単結晶を対象に、レーザー光を結晶に照射したときの電気伝導度や磁化率の変化について研究をすすめてきた。本研究では、強磁性もしくは自発分極などの電気物性や磁気物性を示す材料を対象として、光を用いた計測を行うための装置を開発することを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き、磁性を測定するための装置の開発に取り組むとともに、自発分極を有する物質を測定するための装置の開発にも取り組んだ。磁性を測定するための装置として、モノクロメーターの波長制御や光信号の測定値を取り込むプログラムをLabviewを使用して開発し、UV-VIS-NIR光領域でスペクトルを測定するシステムを独自に開発した。試料として水などを用いて実験をおこなったところ文献値と同様の結果を得ることができたことから、今回開発したシステムが問題なく動作することを確認できた。実際に磁性材料を用いて実験をおこない、磁場に対する依存性などを評価する研究に取り組んだ。また磁性を示す有機導体について、パルスレーザー光を照射した場合に生じる伝導度の変化における温度依存性や光強度依存性について研究した。さらに、自発分極を有する材料を測定するために、自発分極を有する物質とレーザー光が相互作用するときの第2次高調波発生(SHG)を測定するシステムの開発にも取り組んだ。具体的にはナノ秒パルスレーザー光を光源として用い、試料表面からの反射光に含まれるSHG光を測定する装置を独自に開発した。参照試料として半導体基板を用いて実験をおこない、理論的な予測と同様の結果が得られることを確認した。
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