本申請の目的は、α2ドメインを欠損するにも関わらず、通常型のHLA-G1を補う活性を保持しているHLA-G2(膜型)およびHLA-6(分泌型)について、ヒト免疫制御受容体LILR群との分子認識機構を立体構造の観点から明らかにすることである。 今年度は、受容体LILRB2とHLA-G6との複合体構造解析および結合部位同定を進めるために、それぞれのコンストラクトの検討を行った。HLA-G6は、より安定で均一な蛋白質を得るために、封入体の調製法、巻き戻しからゲル濾過クロマトグラフィー精製の条件検討を詳細に行い、比較的長期保存できる蛋白質の調製法を確立した。未だ、構造解析可能な複合体の結晶は得られていないが、ひきつづき微結晶が得られている条件を最適化し、構造解析を継続する予定である。また、HLA-G6のin vivoでの機能を明らかにするために、HLA-G6がLILRB2のマウスホモログであるPIR-Bに結合することを表面プラスモン共鳴法により見い出し、通常型HLA-G1について認められた抗炎症効果がHLA-G6についても観察されることがわかった。HLA-G1と同様に局所皮下への単回投与により、抗炎症効果が持続することがわかった。今後、さらに受容体との複合体構造解析とともに、HLA-G6と通常型HLA-G1の機能比較を行い、HLA-G6分子について構造およびin vivoでの機能的理解を深めていきたい。
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