研究課題/領域番号 |
25870020
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 剛介 名古屋大学, 学生相談総合センター, 講師 (30632153)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会不安 / 対人恐怖 / パフォーマンス不安 / 社会生態学的アプローチ / 関係流動性 |
研究概要 |
ある種の社会不安が高まる傾向に文化差の存在が示されている。なぜある文化圏や社会によって人々が示す社会不安、すなわち周囲の人々に迷惑や不愉快な思いをさせているかに関する対人恐怖と自身のパフォーマンスの十全性に関するパフォーマンス不安の水準が異なるのだろうか。従来、社会不安の文化差は、当該文化における人々に共有されている自己の主体の通念、つまり「人間とはこういった存在である」といった信念の文化的差異により説明がなされてきた。しかしこの説明では、所与とした文化的差異を説明変数とするため、社会不安の文化差を別の心理傾向の文化差によって説明する。したがってトートロジカルな説明にならざるを得ない。そこで本研究では、当該社会や社会状況に存在する新たな対人関係の形成、既存関係から離脱機会の多寡である関係流動性によって、高まる社会不安の質が異なることを検証する。具体的には関係流動性の異なる国(研究1・2)、および社会状況間の比較(研究3・4)を通じて関係流動性と社会不安の関連を検証した。関係流動性の異なる日本と米国、および日本とカナダで社会不安を比較した結果、予測通り、対人恐怖は低関係流動性社会である日本の方が高関係流動性社会である米国やカナダよりも高く、一方で自身のパフォーマンスに対する不安は米国やカナダの方が高かった。そして対人恐怖の文化差は人々の関係流動性認知によって媒介され、低関係流動性社会では対人恐怖が高くなることが示された。また、同一大学に通う日本人学生およびカナダ人学生が置かれた異なる関係流動性状況(1年生と2年以上、入学直後と半年経過後)を準実験および縦断研究によって比較した結果、予測に合致したパタンが示されたものの、統計的に有意な結果が示されなかった。測定指標の精緻化や交絡要因の排除を行うなどしてさらなる検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画されていた国際比較研究は1回であったが、2回実施することでができた。この2つの研究により、解析手法や異なる測定指標を採用するこができ、予測された結果の頑健性が確認されている。そして予定されていた社会状況間比較研究(準実験および縦断研究)も予定通り行っている。しかし、準実験および縦断研究の結果はパタンこそ悪くないものの、統計的に有意な結果に至っておらず、更なる検証が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
ウェブによる大規模社会調査により、同様の仮説を検証する。具体的には関係流動性の差異が確認されている都市部に住む人々と非都市部に住む人々の社会不安が異なるかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度後半に北海道大学から名古屋大学に移ったため、経費の使用が間に合わず、わずかに余剰が出た。 消耗品の購入に充てる。
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