昭和20年代からの国立教育研究所、文部省の学力調査に対して昭和30年代~40年代にかけて地域教育研究所を主として授業改善、学習改善を目的とした多様な学力調査が作成、実施された。それらの資料を基にした児童・生徒の実態や課題を詳細に分析・検討した報告書を調査することで各地域における学力観、学習指導観の形成について分析・考察することができた。 各地域の基底(基準)教育課程の作成にあたり、国語の学力のひとつひとつを能力表等に取り出しているものの、「話す」・「聞く」・「書く」・「読む」能力を有機的に結び付けた実生活にいきることばの教育が志向されていることや、文章を鑑賞する過程や文章を書く過程等、学習活動の過程を重視した学力観を見出すことができた。国語の学習指導に関する資料からだけではなく、学力調査と教育課程に関する資料を基盤にした国語学力観の形成について考察を行うことができた。 研究全体としては、北海道(札幌・旭川・釧路・函館)・東北(青森・岩手・秋田・宮城・山形・福島)、関東(群馬・茨城・栃木・埼玉・千葉・東京・神奈川)の学力調査に関する資料を収集し、分類・整理した。特に文部省の全国学力調査と同時期に行われた地域学力調査の報告書から各地域の教育課題や学力観・学習指導観は、具体的な授業改善の基礎資料を得るという目的のもと、誤答分析や追跡調査、授業方法の効果測定などさまざまな役割を果たしていることを指摘することができた。 研究成果の内容は、日本読書学会、さいたま国語教育学会、国語教育史学会等において研究発表や論文をまとめて報告した。
|