本研究では,自然共生・低炭素型の都市モデルに対するLCCO2評価手法を構築し,炭素排出量を定量的に評価するシステムを構築するとともに,都市住民の自然共生・低炭素型都市モデルに対する評価構造モデル(都市におけるライフスタイル(以下,LS)及び土地利用との関連性の構造化)を構築・解析し,今後の都市環境整備の方向性を示した。 具体的には,H26年度までに構築した自然共生・低炭素都市モデルを構成する,各空間(建築空間,道路空間,公園緑地空間)における低炭素・循環型シナリオ(都市全体の炭素排出量を0.1%削減する土地利用トレードの組み合わせ)を設定し,さらに,都市住民による都市モデルの評価を得るため,都市住民のLSに対する意識や低炭素・循環型シナリオに対するアンケート調査(ネットリサーチ)を実施した。 都市住民に対するアンケート調査データを集計し,それによって得られた,都市住民のLS に影響を与える要因及び低炭素・循環型シナリオの選好性,さらに総合評価との関連性を把握するため,「共分散構造分析」を実施し, 都市住民の評価構造モデルを構築した結果,LS に影響を与える要因は, シナリオの選好性に影響を与え,LS によって優先されるものと優先しないものが存在すること,さらに,都市全体の総合評価は, LS の要因の影響を受けていることが等が把握された。これらの結果を踏まえ,今後の都市環境整備の方向性について検討すると, まず, 総合評価に影響を与えるLS を考慮した都市環境整備の方向性を定める必要があること, 具体的には,本研究において構築した都市住民の評価構造モデルにおいて, 有意な確率が認められたLS の要因である「循環型」や「コミュニケーション」を意識した都市環境整備が望まれること等が把握された。
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