本年度はこれまでの研究において開発した、日本語短縮版Appearance-based Rejection Sensitivity scale(J-ARS scale)を用いて、容姿に起因する拒絶過敏性が身体醜形懸念を独自に予測するかについての検討を昨年度に引き続き検証した。 昨年度までの研究において、容姿に起因する拒絶過敏性や身体醜形懸念が若年層において有意に高まることが明らかになっている。そこで、この若年層に該当する大学生を対象に実施した調査データの解析を行った。その結果、これらの変数との関連が予想される社交不安症状を統制した上でも、容姿に起因する拒絶過敏性は身体醜形懸念を独自に予測することが確認された。この結果については、2015年にスペインで開催されたヨーロッパ児童青年精神医学会議(16th International European Society of Child and Adolescent Psychiatry Congress)において報告を行った。 次に、昨年度に得られたweb調査のデータを用い、容姿に起因する拒絶過敏性と身体醜形懸念との関連について、生涯発達的に検討を行った。その結果、30代以外の全ての世代(20代、40代、50代、60代)において、抑うつ、やせ願望、過食、身体不満足感、拒絶過敏性、他者からの否定的評価への恐れ、強迫症状を統制した上でも、容姿に起因する拒絶過敏性が身体醜形懸念を独自に予測することが確認された。以上の結果より、ライフサイクルを通じて、容姿に起因する拒絶過敏性と身体醜形懸念の関連に変容が生じる可能性が示唆された。
|