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2013 年度 実施状況報告書

パイ共役分子/金属界面に現れる界面準位の起源および形成機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25870034
研究種目

若手研究(B)

研究機関岩手大学

研究代表者

細貝 拓也  岩手大学, 工学部, 助教 (90613513)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワード界面電子構造 / 有機半導体 / 金属電極 / 界面電荷移動 / 角度分解光電子分光 / X線定在波法
研究概要

有機半導体/金属界面の電子構造において特異に現れる電荷移動(CT)準位の形成機構を明らかにするべく、本年度はペリレン系有機化合物のジインデノペリレン(DIP)を貴金属単結晶Cu(111), Ag(111)基板上に吸着させ、放射光角度分解紫外光電子分光法(ARUPS)(分子科学研究所UVSOR)による界面電子構造、およびX線定在波法(ヨーロッパ放射光研究施設ESRF)による分子の基板吸着力の評価を行った。それによって以下の結果を得た。
1. DIPは各金属基板上でファン・デア・ワールス半径を超える小さな吸着距離をとっており、基板の波動関数との大きな重なりによる電荷移動を伴った強い相互作用で吸着していることが示唆された[C. Buerker, et al., Phys. Rev. B 87 (2013) 165443]。
2. 実際、ARUPSとX線光電子分光法の測定によって、基板から分子の最低非占有軌道への電荷移動による界面CT準位の形成が確認できた(基板との電荷移動錯体の形成)。これは、我々が提唱してきたこれまでのモデル―界面CT準位の発現には分子内のヘテロ原子と基板原子との化学結合が必要[G. Heimel, et al., Nature Chem. 5 (2013) 187])―を覆す結果であり、既存モデルの再考が必要である示している [第34回(2013年春季)応用物理学会講演奨励賞受賞講演。T. Hosokai, et al., Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 1647 (2014)]。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

有機/金属界面準位の形成機構に関しては予想を超える成果が得られている。さらに実験で利用した分子科学研究所の極端紫外光研究施設(UVSOR)のビームタイムを上手くスケジュールすることで、当初の目的であるDIPと各種貴金属の界面電子構造を検討するだけでなく、界面電荷移動を起こすための分子構造条件を探るべく、それ以外の有機分子群についても同様な研究が行えた。ただし、界面CT準位の分子軌道分布(波動関数)の帰属に必要な光電子放出角の逆格子空間マッピングの解明の研究はやや遅れている。これは用いた基板表面の高い対称性(111面)に起因した複数の分子配向軸の存在によって光電子の放出角が複雑化し、解析が困難となっているためである。

今後の研究の推進方策

ARUPSの実験に必要なビームタイム(@UVSOR)はすでに確保している(評価は最高ランクから2番目。前期と後期でそれぞれ2週間ずつ)。
界面CT準位の光電子放出マップの解析に内在する課題を解決するためには、吸着分子の面内配向の単一化が必要である。そこで本年度は、より対称性の低い(110)や(100)面を用いることでこの課題の解決を試みる。特に(110)面は他の分子で報告されているように、単一面内配向の単結晶分子ドメインの作製ができる可能性がある。単一配向分子膜の形成を低速電子線回折によって確認したのちに、ARUPSによって光電子放出マップを取得する。その後、千葉大学で開発された計算シミュレーションと上記の測定結果を合わせることで、界面CT準位を構成する分子軌道分布の解明を試みる。
一方、前年度から進めてきた界面CT準位の形成条件の解明も並行して行う。DIPの化学構造式を基準として系統的な有機分子群の貴金属基板上の界面電子構造の評価を行い、分子構造と界面CT準位形成の相関を明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

物品費の余剰金については、当初購入予定であった金の貴金属単結晶が値上がりしたために購入することができなったことによるもの。旅費の余剰金については、当初の予想より支出を抑えることができたため発生した。
物品費に関しては当初の計画の超高真空部品(消耗品)に加えて、新規の有機半導体材料や金の単結晶基板の代わりに金属線と金属膜を作製するためのシリコン基板の購入費用に当てる。旅費に関しては、当初の計画に加えて表面・界面関係の国際会議発表(European Conference on Surface Science (ECOSS)-30 in Antalya (Turkey))も行う。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Structural Requirements for Surface-Induced Aromatic Stabilization2014

    • 著者名/発表者名
      T. Hosokai, K. Yonezawa, K. Kato, R. Makino, J. Yang, K. R. Koswattage, A. Gerlacha, F. Schreiber, N. Ueno and S. Kera
    • 雑誌名

      Material Research Society Symposium Proceedings

      巻: 1647 ページ: 1 to 6

    • DOI

      10.1557/opl.2014.348

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Exploring the bonding of large hydrocarbons on noble metals: Diindoperylene on Cu(111), Ag(111), and Au(111)2013

    • 著者名/発表者名
      C. Buerker, N. Ferri, A. Tkatchenko, A. Gerlach, J. Niederhausen, T. Hosokai, S. Duhm, J. Zegenhagen, N. Koch, and F. Schreiber
    • 雑誌名

      Physical Review B

      巻: 87 ページ: 165443-1 to -5

    • DOI

      10.1103/PhysRevB.87.165443

    • 査読あり
  • [学会発表] π共役系拡張現象によって現れる有機-金属界面電荷移動準位の研究2014

    • 著者名/発表者名
      細貝拓也、米澤恵一朗、加藤賢悟、牧野凜太朗、Yang Jinpeng、Koswattage K. R.、上野信雄、解良聡
    • 学会等名
      第61回応用物理学会春季学術講演会
    • 発表場所
      青山学院大学(神奈川県)
    • 年月日
      20140317-20140320
  • [学会発表] Structural Requirements for Surface-Induced Aromatic Stabilization2013

    • 著者名/発表者名
      T. Hosokai, K. Yonezawa, K. Kato, R. Makino, J. Yang, K. R. Koswattage, A. Gerlacha, F. Schreiber, N. Ueno and S. Kera
    • 学会等名
      2013 Material Research Society (MRS) Fall Meeting
    • 発表場所
      The Hynes Convention Center, Boston (USA)
    • 年月日
      20131201-20131206
  • [学会発表] 基板吸着による π 共役系有機分子の擬金属化現象の解明2013

    • 著者名/発表者名
      細貝拓也, 米澤恵一朗, 加藤賢悟, 牧野凜太朗, J. Yang, K.R. Koswattage, 上野信雄, 解良聡
    • 学会等名
      第7回分子科学討論会
    • 発表場所
      京都テルサ(京都府)
    • 年月日
      20130924-20130927
  • [学会発表] π共役系拡張現象によって誘起される界面準位の発現条件2013

    • 著者名/発表者名
      細貝拓也、米澤恵一朗、加藤賢悟、牧野凜太朗、Yang Jinpeng、Koswattage K. R.、上野信雄、解良聡
    • 学会等名
      第74回応用物理学会秋季学術講演会
    • 発表場所
      同志社大学(京都府)
    • 年月日
      20130916-20130920
  • [図書] The Molecule-Metal Interface2013

    • 著者名/発表者名
      A. Gerlach, C. Buerker, T. Hosokai, and F. Schreiber
    • 総ページ数
      272(153-172)
    • 出版者
      Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA

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公開日: 2015-05-28  

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