研究概要 |
有機半導体/金属界面の電子構造において特異に現れる電荷移動(CT)準位の形成機構を明らかにするべく、本年度はペリレン系有機化合物のジインデノペリレン(DIP)を貴金属単結晶Cu(111), Ag(111)基板上に吸着させ、放射光角度分解紫外光電子分光法(ARUPS)(分子科学研究所UVSOR)による界面電子構造、およびX線定在波法(ヨーロッパ放射光研究施設ESRF)による分子の基板吸着力の評価を行った。それによって以下の結果を得た。 1. DIPは各金属基板上でファン・デア・ワールス半径を超える小さな吸着距離をとっており、基板の波動関数との大きな重なりによる電荷移動を伴った強い相互作用で吸着していることが示唆された[C. Buerker, et al., Phys. Rev. B 87 (2013) 165443]。 2. 実際、ARUPSとX線光電子分光法の測定によって、基板から分子の最低非占有軌道への電荷移動による界面CT準位の形成が確認できた(基板との電荷移動錯体の形成)。これは、我々が提唱してきたこれまでのモデル―界面CT準位の発現には分子内のヘテロ原子と基板原子との化学結合が必要[G. Heimel, et al., Nature Chem. 5 (2013) 187])―を覆す結果であり、既存モデルの再考が必要である示している [第34回(2013年春季)応用物理学会講演奨励賞受賞講演。T. Hosokai, et al., Mat. Res. Soc. Symp. Proc. 1647 (2014)]。
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