研究課題
本年度は、有機半導体/金属接合に現れる界面電荷移動(CT)準位の正体、すなわちCT準位の分子軌道を明らかにするべく、角度紫外光電子分光法(ARUPS)を用いたCT準位からの二次元光電子放出角マッピングの計測に挑戦する予定であったが、当該実験が行える分子科学研究所UVSORのビームラインBL8Bの装置が年度早々に故障したため、実験計画の大幅な変更が余儀なくされた。そこで、有機系のARUPS測定を可能とするUVSORの新規ビームラインBL2Bの立ち上げを推進しながら、以下に示すようなCT準位の発現条件やそれに関連する有機半導体材料の電子構造の研究を行った。1.前年度に界面CT準位が観測されたペリレン系有機半導体のジインデノペリレン(DIP)を試料として、CT準位の形成における基板の効果を検討した。真空蒸着法によって作製した多結晶Ag、Cu面を基板上にDIPを吸着させたところ、単結晶と同様なCT準位が観測された。逆に、DIP厚膜上にそれらの基板原子を蒸着(ドープ)させてもCT準位はやはり観測された。すなわち、DIPと金属基板の界面で見られたCT準位の形成はDIP分子や下地基板の構造には依存せず、分子と金属原子との局所的な軌道間相互作用に起因していることが示唆された。2.有機半導体と金属原子の局所相互作用を解明するべく、金属基板上への均一な金属ドープ有機半導体膜の作製に着手した。試料にはアセン系の有機半導体であるピセンを選択し、Au(111)上に製膜したところ、一層形成過程において構造相転移が起こり、それによって最高非占有分子軌道が二つに分裂することを見出した。詳細な単分子膜の電子構造が確立されたことで、その後の金属ドープ膜の電子構造解析の道筋を切り拓いた。
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