これまでの研究で、mTOR阻害薬ラパマイシンの投与が、脊髄損傷における運動障害および知覚障害を有意に改善することを組織学的・行動学的な解析によって明らかにした。行動学的解析では、マウス脊髄損傷モデルに対するラパマイシンの投与によって、Basso Mouse Scale scoreとInclined plane testで評価した体幹および後肢の運動機能が有意に改善した。また、von Frey test、Hargreaves testで評価した機械的刺激および熱刺激に対する後肢のアロデニアが有意に改善した。組織学的解析では、ラパマイシンの投与によって、腰髄後角のミクログリアの活性化が抑制され、p-38の活性も有意に減少し、脊髄損傷後の神経障害性疼痛が抑制されることがわかった。さらに脊髄の損傷中心部において、炎症を惹起するM1 typeミクログリアを減少させて、TNF-αやIL-1β等の炎症性サイトカインの発現を抑制することが明らかになった。 以上の結果は、脊髄損傷に対するmTOR阻害薬ラパマイシンの投与がもたらす、脊髄障害の改善ための治療効果を裏付ける重要な知見になると考えられる。これらの成果をもとに、神経軸索再生やグリア瘢痕形成への影響もさらに検討して、将来的な臨床治験の実現へ向けて研究を発展させて行くことが期待される。これらの研究成果は関連する国内および海外の学会で発表し、現在、国際的な科学雑誌にも論文投稿済みである。
|