タバコの構成主成分の一つであるニコチンは、アセチルコリン受容体の一つである、ニコチン性アセチルコリンレセプター(ニコチン受容体;nAChR)のアゴニストで、同レセプターを介して細胞に作用する。nAChRは、ヒトの神経系組織以外にも血管内皮、肺・気管上皮をはじめ、口腔上皮、食道上皮、神経筋接合部など全身の多くの器官の細胞で発現が確認されている。また肺がん(特に非小細胞がん)では、喫煙者と非喫煙者間でレセプターが異なった発現のパターンを示すことが分かっている。 また、nAChRは5つのサブユニット(α、β、γ、δ、ε)、さらにαサブユニットは10種類、βサブユニットは4種類の変異体を持ち、合計17種類が発見されている。 本研究ではがんの発生と増殖に関連が高いとされるα7受容体に注目し、口腔扁平上皮がん細胞(HSC-2)を用いて検討を行った。これまで、ニコチン刺激により、Epidermal Growth Factor Receptor(EGFR)を活性化し、細胞増殖促進することは確認できていたが、どのnAChRが作用しているかは不明であった。今回、α7選択的拮抗薬(α-bungarotoxin)を用いてその影響をウェスタンブロット法にて解析した。結果は、ニコチン単独の刺激ではα7の発現を確認できたが、α-bungarotoxinで前処理後のニコチン刺激ではその発現が抑制された。このことからニコチン刺激により、EGFRを介したシグナル伝達が行われ、α7受容体の関連性が示唆された。
なお、以上の研究結果を歯科基礎医学会学術大会にて発表した。
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