本研究では、ある特定のmiRNA群がこのMSI陽性/CIMP陽性/BRAF変異陽性の大腸癌サブグループの発癌において重要な役割を果たしていると仮定し、そのmiRNA群の大腸癌組織における発現解析とさらなる機能解析を行うことにより、このサブグループにおける、新規分子標的治療の開発につながりうる発癌機構のさらなる解明を目的とした。 ①研究代表者らが保有している大腸癌患者100例の大腸癌組織からDNAを抽出し、KRASやBRAF遺伝子変異の解析、MSI解析、CIMP解析を行った。当コホートでは、当初推定していたのとは異なり、BRAF変異陽性の腫瘍群とMSI陽性腫瘍群が大きく重なり合うわけではないことが判明したため、BRAF変異陽性群において発現異常を呈するmiRNA群の同定を目指した。 ②BRAF変異陽性、KRAS/BRAF変異陰性例に対してmiRNAの網羅的発現解析により、両群間で発現の異なるmiRNAを数種類選び出した。別コホートでもその結果を再現できた。 ③その候補miRNAの1種類が癌抑制遺伝子の機能を有することを、ヒト大腸癌細胞を用いた機能解析で見出した。 ④そのmiRNAの発現が低い大腸癌患者では、抗EGFR抗体の感受性が低いことを示した。 以上のように、本研究では、BRAF変異大腸癌で特異的に発現異常が起きているmiRNAを同定し、そのmiRNAがこの分子サブタイプの発癌過程や治療感受性に何らかの寄与をしていることを示した。今後このmiRNAの発癌機構への関与の詳細を明らかにすることにより、新規治療標的分子の同定につながることを期待している。
|