研究課題
若手研究(B)
本研究では、植物に対する潜在的な放射性セシウムの 供給経路となりうる土壌有機物の分解・無機化と放射性セシウムの可給性の関係を明らかにすることを目的とする。土壌有機物の分解・無機化により、それまで土壌有機物に吸着されていたセシウム137 が放出されることで、放射性セシウムの可給性が上昇することが予想され、とりわけ、易分解性有機物の動態が重要であると考えられる。そこで、本研究では1)逐次抽出法、2)粒子径分画、3)実験室培養を併用することで、土壌有機物の分解特性を考慮に入れた、植物‐土壌間の放射性セシウム 動態をより詳細に明らかにすることを目的とした。本年度は、福島県飯舘村において土壌中の放射性セシウム濃度の高い畑及び水田(各3地点)から、0-5 cm層、5-10 cm層をそれぞれ採取した。実験室に持ち帰った各土壌試料を篩分け(2ミリ網目)した後、含水率・pH・強熱減量等の基礎的データの測定を行った。さらに、土壌有機物の分解・無機化に伴う放射性セシウムの可給性の変化を明らかにするため、土壌の培養実験を開始した。各培養期間(0日、30日、60日)終了後の土壌を逐次抽出に供した。土壌はそれぞれ(1)水溶性画分、(2)酢酸アンモニウム抽出画分、(3)過酸化水素水処理画分に分画し、順次ゲルマニウム半導体検出器を用いた放射能測定を行っている。また、酢酸アンモニウム処理後の土壌試料の土壌粒子径による分画(砂、シルト、粘土)も進行している。これらの実験から得られたデータから、土壌有機物の分解・無機化による土壌中の放射性セシウムの可給性の潜在的な変化量を推定することが可能となる。また、次年度以降の植物栽培試験の結果とあわせることで、植物‐土壌間での放射性セシウムの動態を制御する要因及びメカニズムを明らかにすることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、野外で採取した土壌試料の培養を開始し、順次分画及び放射能測定が進められている。
引き続き引き続き、本年度開始した土壌の培養試験を継続して行い、土壌有機物の分解・無機化のさらなる進行による放射性セシウム可給性の変化を明らかにする。さらに、本年度の培養試験と同一の条件下で、植物栽培試験を行う。これらの結果を基にして、植物が介在した場合での土壌有機物の分解・無機化が土壌中の放射性セシウムの可給性の変化を明らかにする。
試料採取に要する旅費及び消耗品の購入に関する支出を抑えることが出来たため。予算の関係上、購入予定から削除していた小型超低温槽を購入する。翌年度予算で予定している凍結乾燥機と組み合わせて、試料の迅速かつ適切な乾燥を行う。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section B: Beam Interactions with Materials and Atoms
巻: 318 ページ: 102-104
10.1016/j.nimb.2013.06.050.
巻: 318 ページ: 105-108
10.1016/j.nimb.2013.06.049
巻: 318 ページ: 70-75
10.1016/j.nimb.2013.06.067
巻: 318 ページ: 191-193
10.1016/j.nimb.2013.06.060
巻: 318 ページ: 99-101