研究課題
本研究では、植物に対する潜在的な放射性セシウム供給源となりうる土壌有機物の分解・無機化が、植物が吸収可能な放射性セシウム量の変動に与える影響を明らかにする事を目的とする。福島県飯舘村で隣接して存在する水田及び畑地から採取した土壌を長期間実験室培養に供し、逐次抽出(可水性、イオン交換態、有機物吸着態、酸可溶性、残渣)した画分中の放射性セシウム濃度を測定した。さらに、土壌有機物量及び可水性画分の溶存有機炭素濃度・紫外吸光度(254 nm)も併せて測定した。結果より、土地利用の違いによる可給態放射性セシウム量及び、培養期間中の変化パターンが異なる事が明らかとなった。採取した土壌及び可給性が低いと考えられる酸可溶性、残渣画分中の放射性セシウム量には、両土壌で違いは見られなかったが、水田土壌では畑地土壌と比較して、培養期間を通して常に可水性、イオン交換態、有機物吸着態の画分中の放射性セシウム量が多かった。また、培養期間中に可水性、イオン交換態、有機物吸着態画分では有意な経時変化が見られた。とりわけ、水田土壌では、培養期間における可水性画分と有機物吸着態画分の増減が逆のパターンを示す結果が得られた。さらに、可水性画分での溶存有機炭素量と放射性セシウム量の変化は同様のパターンを示した。以上の事から、土壌有機物に吸着されていた放射性セシウムは、土壌有機物の分解・無機化により一時的により植物に吸収されやすい形態へと変化する事が示唆された。一方で、畑地土壌では水田土壌と比較して土壌有機物量に差は見られないにも関わらず、溶存有機炭素量が少なく、254 nmの吸光度から算出したSUVA254において高い値を示した事から、吸着されている土壌有機物の質的相違により、土壌有機物の分解・無機化が制御され、放射性セシウムの可給性の変化に影響を及ぼしている可能性が示唆された。
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