研究課題
若手研究(B)
高齢者の失明原因の一つである加齢黄斑変性に対する根本的治療策として、細胞移植療法の開発は焦眉の急である。本研究では、狭小な眼底下等の生体組織下へ効果的に細胞を送達するために、柔軟かつ拒絶反応の少ない自己支持性高分子超薄膜(ナノ薄膜)からなる細胞デリバリー担体の創製を目指す。平成25年度の成果は以下のとおりである。(1)自己支持性高分子ナノ薄膜の調製と物性評価:任意の疎水性高分子(例:ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸共重合体)を水溶性高分子からなる犠牲膜上にスピンコートし、これを水中で剥離することで膜厚数十nmの自己支持性ナノ薄膜を作製した。AFMナノメカニカルマッピングによって、ナノ薄膜の材料特性を評価したところ、膜厚が数十~数百ナノメートル領域において弾性変形能が増大することが明らかになり、極めて柔軟なナノ薄膜を得ることができた。(2)ナノ薄膜表面における細胞運動の制御:ナノ薄膜上に担持した細胞(例:骨格筋細胞、網膜色素上皮細胞)の免疫染色像から細胞接着や組織化挙動を解析した。ナノ薄膜上にカーボンナノチューブや磁性ナノ粒子を複合化させたところ、接着した細胞は微小繊維や表面粗さを認識することで、異方的な伸長挙動や高い成長率を示し、組織化挙動を増強することに成功した。(3)医用高分子からなるナノ薄膜の微細加工化:注射器による網膜下への細胞移植を達成するために、ポリ乳酸グリコール酸共重合体からなる自己支持性ナノ薄膜をシリンジ投与可能なサイズに成形した。マイクロコンタクトプリンティング法を利用することで、数百マイクロメートルサイズの微細化ナノ薄膜を作製した。作製した微細化ナノ薄膜の表面には、網膜色素上皮細胞を担持することが可能であり、注射針口径の約2倍程度の直径までのナノ薄膜であれば、細胞を安定に担持した状態で注射針内に吸引し、射出できることが明らかになった。
1: 当初の計画以上に進展している
平成25年度の研究計画では、ナノ薄膜の微細化まで目途をつけることが目標であったが、マイクロコンタクトプリンティング法によるナノ薄膜の転写技術の確立により、平成26年度で計画しているナノ薄膜の形状制御や担持細胞の安定性評価まで踏み込むことができた。
平成25年度の研究成果より、細胞担持ナノ薄膜の安定性評価(接着形態、細胞生存率)には目途がついたので、平成26年度では、細胞担持ナノ薄膜の機能評価を中心に研究を進める。また、作製した細胞担持ナノ薄膜の生体内安全性・安定性を評価するため動物実験を実施する予定である。平成25年度から26年度にかけて所属機関の変更が生じたが、テレビ電話会議や研究出張を通じて共同研究者との連携関係は密であり、研究計画遂行に大きな支障は無い。
国際会議出張旅費として計上していたが、所属機関の異動に伴い平成25年度での使用には至らなかった。平成26年度における国際会議出張旅費として計上する。既に参加する国際会議は決定しており、現在参加登録の手続き中である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件)
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