研究課題
本研究では、狭小な眼底下等の生体組織下へ効果的に細胞を送達するために、柔軟かつ拒絶反応の少ない自己支持性高分子超薄膜(ナノ薄膜)からなる細胞デリバリー担体の創製を目指す。平成26年度の成果は以下のとおりである。(1) 細胞担持ナノ薄膜の機能評価: 平成25年度で作製に成功した細胞担持ナノ薄膜に関して、ナノ薄膜上での網膜色素上皮細胞(RPE細胞)の分化挙動、および、医療用シリンジによる吸出し操作前後での細胞生存率を評価した。RPE細胞とナノ薄膜を異なる蛍光色素で各々染色したところ、ナノ薄膜上でRPE細胞が単層組織を形成することが見出された。この時、単層組織中のZO-1タンパク質を免疫染色にて可視化したところ、RPE細胞に特徴的なタイトジャンクションの形成が認められた。(2) 医療用シリンジによる細胞担持ナノ薄膜の吸出し試験: RPE細胞担持ナノ薄膜(直径 400 μm)を25 G針で吸引・射出したところ、針管内における力学的ストレス負荷にも関わらず、吸出し前後で細胞生存率に大きな変化が生じないことが明らかになった。また、異なる直径を有するナノ薄膜(直径 300-1000 μm)を用いた場合の細胞生存率を評価したところ、ナノ薄膜の直径に関わらず、吸出し前後で80%以上の細胞生存率を維持することに成功した。(3) 動物実験による網膜下への細胞担持ナノ薄膜の移植および操作性の評価: ブタ網膜下にナノ薄膜を注入したところ、ナノ薄膜は網膜下で円盤状に展開し、黄斑部近傍に生着する様子が認められた。さらに、RPE細胞担持ナノ薄膜をラット網膜下へ移植したところ、病理組織切片観察より層状の細胞集団が黄斑部に観察された。以上より、ナノ薄膜は、網膜のような狭小な生体組織下に対する細胞移植手術において、移植細胞の構造および機能を保持する担体として有用であることが示された。
(1),(2): 早稲田大学の所属研究室および学内関連研究所のホームページ(3),(4): 前所属機関(東北大学原子分子材料科学高等研究機構)が発行する研究紹介用オンラインコンテンツ"AIMResearch"
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