本研究では加齢黄斑変性症のような難治性網膜疾患に対する治療策として、狭小な網膜下への網膜色素上皮細胞の移植を狙い、柔軟な高分子ナノ薄膜からなる細胞移植担体の創製を目的とした。ポリ乳酸グリコール酸共重合体からなる微細パターン化ナノ薄膜を調製し、細胞をナノ薄膜上で選択的に培養した。医療用注射針を用いて細胞担持ナノ薄膜の注入操作を試みたところ、針内部のずり応力にも関わらず射出後もナノ薄膜上の細胞は90%近く生存することが判明した。さらに、ラット網膜下に細胞担持ナノ薄膜を移植したところ、黄斑部近傍に細胞層の移植が示唆された。以上より、細胞移植療法におけるナノ薄膜の有用性を初めて示すことに成功した。
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