研究課題/領域番号 |
25870051
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉田 明弘 明治大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80645458)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 年縞堆積物 / 古気候 / 完新世 / 花粉分析 / 東北日本 |
研究実績の概要 |
本年度は作業の遅れを取り戻し,気温・降水量の定量的復元に必要となる高時間分解の花粉化石データを構築するため,青森県小川原湖の年縞堆積物の花粉分析を重点的に行った。1cm毎にサブサンプリングした試料のうち,1000試料の処理と分析を終了できた。この成果により,現在は過去1万年間の気候変動を十数年精度で解析できる時間分解能の花粉化石データセットを作成した。この花粉分析データセットは,当初の目的であった時間分解能よりも僅かに劣るものの,20~30年規模の微小な気候変動を検出できる能力がある。本研究の成果は,明治大学リバティアカデミー「過去3万年間の環境変動と人類活動の繋り」で一般市民を対象にした講演を行った。また,国際第四紀学会の支援を受けて開催された 若手研究者国際ワークショップで講演した。総合地球環境学研究所の小規模経済プロジェクトでは研究成果の講演を行い,日米英の研究者から高い評価を頂いた。国内では,日本植生史学会で青森県小川原湖の花粉化石データを用いた気温・降水量の復元結果を公表した。 また,これまで申請者が蓄積した日本各地の花粉化石データについて国内外の学術誌で積極的に公表した。吉田ほか(2014)により鳥海山における完新世初頭の花粉化石データが植生史研究に掲載された。Yoshida et al. (2015) により長野県中部高地における過去3万年間の花粉化石データがVegetation History and Archaeobotanyで掲載予定である。旧石器研究の招待論文として,日本列島の花粉分析における近年の研究動向や特徴をまとめた総説論文が掲載予定である。このように本研究の成果は国内外の研究者から高く評価され,地理学や地質学だけでなく,人文社会科学の幅広い分野に貢献している。また本研究による過去1万年間の気候変動に関する研究は着実に進展していると確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的のうち,過去1万年間における高時間分解能の花粉化石データの作成に成功した。しかし,当初の目的である数年精度の花粉化石データの完成は,今年度末までには終了できなかった。また,2015年4月に明治大学から鹿児島大学へと所属機関の変更があり,この移動に伴って研究が一時的に停滞した。以上の点を踏まえ,総合的に見て(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的よりはわずかに劣るものの,十数年精度の高時間分解の花粉化石データを作成することができた。今年度はこの花粉化石データを基に,気温・降水量を定量的に復元し,さらに時系列解析などを用いて過去1万年間における数十~百年規模の気候変動の特徴と原因について検討する予定である。また,過去1万年間の気候変動を正確に把握するためには,当初の研究目的で設定した数年精度の高時間分解能を持つ花粉化石データを実現させる必要がある。そこで,最終年度である2015年度の方策としては,今年度までに得られた花粉化石データセットによる古気候の復元結果を基にして,急激な気候変動が検出された時代に焦点を当て,その時代における花粉分析を重点的に行う予定である。そして,過去1万年間の気候変動についてより信頼性の高い復元結果を提供できるようにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に予定していた海外出張が受入研究者の所属研究機関の変更に伴って,日本国内の出張となった。また,昨年度分からの繰越金もあり,未使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年4月に,研究代表者は明治大学から鹿児島大学へと研究機関を変更した。そのため,出張予定であった鳴門教育大学や東北大学などとは遠距離となり,かつ旅費もかかることになった。したがって,本年度の未使用額は,2015年度の出張旅費の一部にあてる予定である。
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