研究課題/領域番号 |
25870055
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柏倉 俊介 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (10589956)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射性物質 / ICP-MS / 溶出挙動 |
研究概要 |
2011年3月11日に発生した東日本大震災に付随して起こった東京電力福島第一原子力発電所の全電源喪失によって土壌中に拡散をされた放射性物質のうち、I-131、Cs-134、及びCs-137といったγ線核種はγ線スペクトロメトリーにて比較的容易に検出及び定量が可能である一方で、Sr-90のようなβ線核種、及びU-235のようなα線核種においては前処理などに時間を要する為、多量の検体に対応することが難しい。そこで本研究においては主に東北地方にて採取した土壌試料について、二重収束型の質量分析計の採用により非常に高い感度を有する高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-SFMS)によってこれらの放射性物質を高感度に検出することを試みた。また、これらの放射性物質について酸洗浄による除去を念頭に置いた希酸への溶出挙動の解明を試みた。 上記の放射性物質のうち主要なα線核種である放射性ウランについて、その簡易的な定量はマイクロウェーブ加熱加圧酸分解と四極重型の高周波誘導結合質量分析法の組み合わせによって迅速性と定量性を両立させた手法が既に報告をされているが、本法においてはマイクロウェーブ加熱加圧酸分解の代替としてより簡便なホットプレート加熱酸分解を用いて抽出を行い、これを前述のICP-SFMSと組み合わせることで高い正確度と精度を両立した放射性ウランの定量を行うことが可能となった。 また、γ線核種であるCs-134及びCs-137についてはBa-134及びBa-137が質量干渉を起こすため、陽イオン交換膜を用いた分離操作などを行った上での精密定量を現在試行中であるが、元来の濃度が非常に希薄であるため高感度検出には至っておらず、引き続きこれらの検出を試みる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要についてはα線核種の検出に対しては比較的良好な結果が得られた。すなわち、主に東北地方にて採取した土壌試料中の放射性ウランについてホットプレート加熱酸分解による抽出後にICP-SFMSを用いた測定により高感度かつ良好な精度にて定量を行うことが可能であった。一方で、γ線核種については土壌中に存在する絶対量が非常に希薄である上に、試料中に普遍的に存在するBa-134及びBa-137による質量干渉の影響を排除することが困難であったため、現段階においてはその直接検出には至っていない。 加えて、昨年末の段階で主要な測定に用いていた弊所で所有するICP-SFMSが内蔵する高周波電源のうちマッチングボックスが故障したため、以降研究の進捗が滞っている状態である。この修復は現在(2014年4月21日時点)進行中であり、近日中には装置の復旧が図られる見通しであるため、引き続き前述の高感度検出に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は土壌試料中の放射性ウランについてその簡易的な定量を試行したが、本年度は更に放射性のプルトニウムに関しても定量を試み、また日本分析化学会より購入済の土壌放射能標準物質を用いてバリデーションを行う予定である。また、研究実績の概要に記載の通りCs-134及びCs-137についても引き続き直接検出を試みる予定である。これらの検出を試みると同時に、希酸による抽出を試みるべく、酸の種類、抽出温度、抽出時間、液固比等をパラメータとして、土壌試料中の放射性物質の希酸中への溶出挙動について、サンプリング地点の差異と共にその解明を行う予定である。今年度は前述のICP-SFMSの電源系統のトラブルにより実験の進捗状況が遅れ学会報告などができない状況となったが、本年度においては研究代表者が所属をしている廃棄物資源循環学会等を中心に、上記の抽出条件の変化による溶出挙動についての研究報告及び論文執筆に取り組む予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の進捗状況にも記載の通り、昨年末に測定に用いていたICP-SFMSの高周波電源のマッチングボックスが故障をしたため、修理完了の時期及びそれまでに必要な消耗品の量を正確に見通すことができなかったため。 直接経費分として生じた次年度使用額31,333円円については、平成26年度請求額と合わせて、ICP-SFMSの測定時に使用するアルゴンガスに加えてビーカー類の実験器具や試薬などの消耗品、および成果発表の旅費に充当する予定である。。
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