研究概要 |
【研究の目的】免疫能選抜による抗病性育種実現化へ向けた基礎研究として,25世代に渡るマウス末梢血免疫能を指標とした免疫能選抜マウス(末梢血貪食能高,抗体産生能高,両形質高,対照の4系統)の免疫機構の変化を明らかにし,さらに,疾病抵抗性を検討することを目的とした.【研究成果】本年度は系統別の免疫能の比較を行った.末梢血貪食能による選抜が好中球数を増加させること,また血中貪食能と血中好中球数の相関が高いことから血中貪食能の選抜が血中好中球数を増加させると考えられた.一方,脾臓,骨髄等においては好中球数に差が認められなかったことから,好中球遊走に係わる因子の探索を行った.系統別にプールした血漿のサイトカインアレイ解析を行った結果,系統間で2-3倍の違いが認められるケモカインが見出された.しかし,トランスウェルを用いた遊走能試験から,好中球表面上の受容体発現量の差が重要であることが示唆され,ケモカイン受容体に系統間差が認められた.その他に,血中,脾臓を用いた解析から貪食能の選抜によりCD4/CD8比は減少すること等が明らかとなった.また,脾臓細胞を用いたインビトロ試験において,ConA,PHA, LPSで刺激したところ抗体産生能高選抜マウスにおいて増殖活性が高くなっていることが認められた.以上の結果は,25世代以上選抜している本系統マウスの定常時免疫能に違いが有ること,そして免疫刺激時において異なる反応性を示すことを意味しており,疾病抵抗性試験においても異なる反応性が期待される.
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