研究課題/領域番号 |
25870062
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 大助 東北大学, 災害科学国際研究所, 助教 (50436078)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 津波 / 津波堆積物 / 日本海 / 数値シミュレーション |
研究概要 |
本研究では,日本海沿岸において歴史津波の痕跡(史料・堆積物)調査を行い,同地域における津波の発生時期と規模を明らかにするとともに,発生時期と規模に基づいて津波氾濫の再現と波源の数値的検討を実施し,日本海東縁部における地震・津波と日本海溝沿いの巨大地震・津波の関連を明らかにすることを目的としている. 平成25年度は,津波伝播・氾濫解析のための海底・陸上地形データの収集と整理を行うとともに,秋田県沿岸部において地形的特徴の異なる9か所を選定して歴史・先史津波によって堆積した可能性のあるイベント性堆積物の調査を行い,そのうち3か所(八峰町,能代市,男鹿市)で,津波によって堆積した可能性のあるイベント性砂層を発見した.八峰町八森付近は幅1kmに満たない沿岸低地であるが,現在の海岸から約700m内陸の地点で泥質の湿地堆積物中に層厚約10cmのイベント性細粒砂層が確認された.能代市浅内付近は,海跡湖沼を干拓した地域である.ここでは,地表から深度2.5mまでの間に厚さ5cm程度の細粒砂層が2層確認された.浜堤列が発達する典型的な海岸平野に位置する男鹿市船越では,現在の海岸から約1.4km内陸の地点で泥炭中に細粒砂層が確認された.能代市・男鹿市におけるイベント性砂層は,標高10~30mに達する現世海岸砂丘よりも内陸に分布している.砂層の堆積が大規模砂丘の発達以前に起こった可能性,または砂丘を乗り越える規模の津波が生じた可能性を検討するため,現在,採取したサンプルについて,分析準備を進めている.その結果は,日本海沿岸での津波発生時期と規模を見極めるための重要な成果の一つになると期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,日本海沿岸における歴史津波の史料・堆積物調査と,津波の数値的検討を行い,日本海東縁部における地震・津波と日本海溝沿いの巨大地震・津波の関連を明らかにすることである.25年度における達成度は,全般的にみてやや遅れが生じている. 平成25 年度は,津波堆積物に関しては青森県五所川原市,秋田県能代市,および山形県酒田市の沿岸低地および海跡湖沼を候補として掘削調査を行い,津波痕跡の可能性がある堆積層を検出してその年代を明らかにする計画であった.本年度の実績としては,秋田県能代市周辺で調査を行い,過去の津波によって堆積した可能性のあるイベント性砂層を検出した.現時点では年代測定が完了していないため,やや遅れが生じている. 日本海沿岸の津波に関する新たな史料の発掘と既存史料の精査を行って津波痕跡高データを収集・整理するとともに,各々のイベントの時間的推移も明らかにする計画であったが,本年度,史料の検討については未着手の状況で,遅れが生じている. 当初計画で平成26年度に予定していた津波の数値的検討に関しては,本年度,これに用いる地震・津波当時の古地形標高モデル作成の前段階として,既存の地形データの収集と整理を行ったことから,計画よりもやや先行している.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,25年度に引き続き堆積物掘削調査を行う.実施場所は山形県酒田市周辺を重点対象とする.酒田市周辺は2011年東北地方太平洋沖地震の震源域の西隣に位置するとともに海岸低地が広がっており,日本海溝沿いの巨大地震・津波に関連する日本海側の地震・津波履歴を明らかにする上で鍵となる地域のためである.全般的な計画の遅れに対しては,堆積物調査の進捗でコントロールできると考えられるため,調査地点として調査可能期間が限られる低湿地(圃場)以外にも,海岸露頭など常時調査可能な場所も検討する.また,26年度は25年度に実施できなかった史料の検討を行うとともに,当初計画通り中世・近世の絵図を基に古地形の概略を推定する.堆積物掘削データと古地形情報から年代ごとの古環境の変遷を明らかにし,津波数値解析に用いる地震・津波当時の古地形標高モデルを作成する.津波の数値的検討に関しては,予定通り海底地震を想定した津波数値解析を行って津波浸水域と地震断層パラメータを推定し,東北地方太平洋沖の歴史的な巨大地震との関連を明らかにする.さらに,断層モデルだけで説明できない津波に関しては,海底地滑りの可能性も考慮に入れて波源位置と規模の検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費に関しては当初計画していた土壌硬度計・PCの機種を再検討し、次年度導入に予定を変更した。旅費に関しては、当初計画に従って津波堆積物調査地域を決定した後、調査可能になる時期を見計らって実施する必要があったため、実際の使用が予定よりも少ない状況となった。堆積物試料の採取時期が遅くなったため、25年度に分析用費用として見込んでいた人件費・謝金およびその他の支出を26年度に繰り越す必要が生じた。 物品費に関しては、再検討後の機種を導入し、堆積物・史料調査に用いる。使用額は25年度予定額と同じである。旅費に関しては、酒田市周辺および五所川原市での調査に用いるほか、能代市周辺での再調査にも使用する。人件費・謝金は採取した堆積物の分析に、その他の費目は堆積物試料の年代測定および微化石分析に使用する。特に年代測定は試料1点でおよそ6万円かかるため、次年度使用額を合わせても、測定対象を厳選する必要がある。
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