研究課題/領域番号 |
25870064
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 修一 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00579203)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | グラフェン / 熱CVD / 光電子分光 / 熱酸化反応 / リアルタイム光電子分光 |
研究概要 |
本研究はグラフェン/Cu基板を酸化させることによってグラフェン/Cu界面に酸化物を形成し、その酸化物を溶解することによって基板とグラフェンにダメージなくグラフェンを剥離する手法を開発することを目的とする。 この目的達成に向け、初年度では下記の成果を得た。 (1) 高輝度放射光を用いたグラフェン/Cu酸化状態の同定:熱CVDにより形成したグラフェン/Cu(111)基板を大気中に取出すことによって、基板のCuが酸化され、界面にはCu2Oが形成されることが分かった。このCu2Oは真空中で400℃以上の加熱により還元されることも明らかとなった。一方で、大気曝露によってグラフェンには水が吸着したが、200℃の加熱によりグラフェンへ吸着した水は除去され、グラフェンも酸化されていないことが分かった。このことにより、グラフェン/Cu基板を酸化してもCuのみを酸化でき、グラフェンにはダメージが小さいことが明らかとなった。 (2) 炭素原子のCu基板内拡散現象の発見:グラフェン/Cu基板の950℃での加熱により、Cu基板中への顕著なC原子拡散が観察された。このようなC原子拡散は1000℃でのCVD成長中では観察されなかったため、界面のCu2O膜には炭素原子拡散阻止能があることが示唆された。このCu2O膜を効果的に活用することがCu上グラフェンの高品質成長に資すると期待される。 (3) 半導体界面酸化機構の解明:半導体/金属界面であるグラフェン/Cu界面酸化機構との比較を行うため、絶縁体/半導体界面(SiO2/Si界面)の酸化過程を観察した。その結果、室温での酸化において、酸化速度が急増する自己増速酸化現象が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
グラフェン/Cu基板を酸化させた時の酸化状態について知見が得られた。また、Cu2Oは希塩酸に溶解することができるので、本研究で提案している金属触媒酸化を介したグラフェン剥離プロセスが実現できることが見込まれる。 また、昨年度の研究により、Cu基板中へC原子が拡散するという予想していなかった現象が新たに観察された。またC原子拡散はCu2Oによって阻害される可能性も示唆された。この結果を用いることでCVD成長中の炭素原子のCu内拡散を抑制できるため、高品質グラフェンの成長が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
1年目の研究において、従来予想していなかったC原子の拡散およびCu2O膜のC原子拡散阻止能が示唆された。この結果を用いることでCVD成長において高品質グラフェンを成長させることが可能と期待される。 そこで次年度は当初の計画に加えて、Cu2O膜の炭素拡散阻止能を実験的に検証すること、およびその結果を用いた高品質グラフェンの成長指針を得ることを目標に加える。 また、従来の計画であるグラフェン/Cu界面での酸化反応機構の解明も合わせて進める予定である。
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