研究課題/領域番号 |
25870065
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小西 康郁 東北大学, 流体科学研究所, 研究支援者 (20552540)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マグヌス力 / 球 / 卓球 / 球技 |
研究概要 |
回転する球周りの流れにおいてマグヌス力が発生することはよく知られているが,特定のレイノルズ数領域において,通常のマグヌス力とは逆向きの力が発生することはあまり知られていない.本研究は,この回転する球周りの流れにおいて発生する負のマグヌス力に注目し,その発生メカニズムの解明とスポーツ工学への応用を目指した基礎研究である. 力計測を行うことにより負のマグヌス力があるレイノルズ数以上の領域で発生することが再確認された.このとき揚力係数は,回転数の増加とともに直線的に増加したのち急激に減少しその後,再び緩やかに揚力が増加することがわかった.揚力の減少が起こる回転数はレイノルズ数の増加とともに減少し,また抗力係数も同様の傾向を示すことがわかった.また,回転数を球の周速度と球の直径に基づくレイノルズ数で定義すると,揚力が急激に変化するレイノルズ数が一定値となることがわかった.このことは,球表面に形成される境界層が大きな役割を果たしていることを示唆している. 真球を用いた球技として卓球が存在する.得られた計測結果と卓球競技におけるフォアハンドスマッシュの結果から予測されるレイノルズ数および回転数を比較すると,負のマグヌス力が発生する領域内に重なる領域が存在する.そこで力計測の結果からドライブ回転するボールにおける揚力,抗力を算出する簡易的な近似式を提案し,同式によって導かれる軌跡により球が負のマグヌス力が発生する領域を有する飛翔の場合,他の軌跡に対しまっすぐ進行したのち急激に落下する軌跡となることを示した. また,同試験装置を用いて剥離点が固定される角柱を用いた試験を行い,自由回転によって選択される回転数が強制回転時において最大抗力を発生する回転数に一致するという興味深い結果が得られている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では,二次元円柱による計測から流れの三次元性の影響を調べる予定であったが,他の研究者の飛翔実験では負のマグヌス力が表れないとの新しい報告があり,予定していた試験期間で再度,球を用いて力計測を行いデータの再確認したため予定より遅れることとなった. 一方で,得られた球の力計測の結果から軌跡をシミュレートするために必要な簡易的な揚力・抗力の算出式を導出した.これは最終年度に予定していたものであるが実用上重要であると思われるため先行して発表しており遅れを十分カバーしている. また,装置の応用として剥離点が固定される角柱による実験も進めておりおおむね順調に進展んしていると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,球周りに形成される流れ場に注目し計画通り実験を進める. 年度後半には,3次元PIV計測装置一式が導入される予定となったため,年度後半は,PIVを用いた計測により球周りの流れを詳細に調べて行く.点計測から面計測へ計測効率が大幅にあがることで研究を推進して行く. また,他の研究者による飛翔実験では負のマグヌス力が表れていないことから,同研究者とディスカッションを通じて風洞実験と実際の飛翔における現象の違いについて検討を進めて行く予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,三次元性の影響を調べるため回転円柱を製作する予定であったが,本年度は球による再試験を行ったため製作しなかったことにより生じたものである. 平成26年度請求額と合わせて,当初計画通り模型の制作と新規に別途調達予定となったPIV装置を同試験装置に組み込むための治具製作費として平成26年度の研究遂行に使用する予定である.
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