研究課題/領域番号 |
25870068
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
山口 未花子 北九州市立大学, 地域共生教育センター, 講師 (60507151)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 狩猟 / 人と動物 / 地域比較 / 現地調査 / 人類学 |
研究概要 |
5月には宮城県石巻市で被災地の生業に関する調査を行い、地域の祭りにおいて地元で捕獲された海産物が重要であることや漁業という生業が、祭りのあり方に影響を与えていることを明らかにした。また8月にはカナダ、ユーコン準州では、狩猟採集の知識と経験を豊富に持つ古老に対し、集中的な聞き取り調査を実施し動物との交渉や動物資源の利用についての知見を得ることができた。 さらに5月~6月にかけて展示「極北の狩猟民カスカ」展および、シンポジウム「狩猟生活の世界」を開催し研究成果を広く市民に伝える取り組みを行った。シンポジウムでは北九州市立大学および京都大学の研究者をまねき、それぞれのフィールドにおける狩猟の実践について報告を得るとともに、ディスカッションの時間を設け、世界の狩猟生活の比較を行うとともに、その本質についても議論を深めた。 さらに6月には日本文化人類学会代47回研究大会(慶應義塾大学)で分科会「動物殺しの倫理と論理」において「北米先住民カスカと動物の殺し殺される関係」とのタイトルで、8月には国際人類民族科学連合世界大会(マンチェスター大学)で分科会「Observing the disaster and /or participating in the aftermath」において「Subsistence and religion in the Oshika Peninsula after Tsunami diseaster」というタイトルで発表を行った。 このほか沖縄県八重山地方のイノシシ猟に関する短期の調査と資料の整理と検討を行った。また、3月には国立民族学博物館の吉田氏を訪ね、動物資源の象徴的利用に関する比較研究の共同研究について打ち合わせを行った。 またこれまでのカナダでの研究成果を単著『ヘラジカの贈り物』(春風社)として出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画に基づき概ね計画に沿った進捗状況を得ている。現地調査としては、カナダ、宮城、沖縄での調査を実施し、研究に必要な一次資料を収集することができた。ただしカナダにおいては、対象が古老に絞られていたことから、来年度以降は実際に狩猟をする現場を含めた幅広い層への調査が必要となる。さらに、重要なインフォーマントである古老が大病を患ってしまったため調査が十分に行えなかった部分がある。また西表の調査は期間が短かったことから資料の収集や検討が中心となった。、また、調査を通じていいずれの調査地においてもインフォーマントとの関係は良好に保たれていること、着実に成果が積み上げられていることから、今後の計画においても見通しを得ることができた。 成果の公表についても、専門書の出版や国内外の学会での発表を通じ、専門分野の研究者との間で議論を行うことで研究成果を位置づけるとともに今後の方向性についても示唆を得ることができた。また一般市民へ向けた展示とシンポジウムなどを行うことで、文化人類学の新しい視点と、社会的な役割について確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き計画に沿って研究を進めていく。ただし、昨年度の現地調査で十分な期間が取れなかった西表のイノシシ猟について狩猟する現場だけでなく分配や販売についても調査を行う。さらにカナダにおける狩猟の調査についてはインフォーマントである古老の病状によっては今後の調査の継続が難しくなる恐れもあるため、調査が可能であれば、本年度の最優先課題として位置付ける。 また、26年度は国際人類民族科学連合中間会議が日本で開催されることから、こうした会議への出席を通じて最新の人類学の知見を得るとともに、研究者との議論を通じてこれまでの成果を検討する。 研究成果の発表についても、学会や論文、著書によって着実に行う予定である。また、広く市民への還元として、展示や講演会、ワークショップの実施も視野に入れている。
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