カナダ、ユーコン準州の先住民カスカ及びトリンギットを対象とした現地調査を実施し、動植物などの自然資源や狩猟採集に関する知識や技術について調査を実施した。このなかで、春季の資源利用として白樺の樹液採集など、新たな知識を学ぶことができた。また、通過儀礼である葬儀についても調査する機会に恵まれた。葬送儀礼の準備や当日の進行、人々の交流を通じてカスカ社会の構造の一端を知ることができた。また、こうした儀礼における動物の象徴性、儀礼食における動物資源の利用を明らかにすることで、動物がカスカ社会を表彰すると共にもてなしなどにおいても高い価値を付与されていることなど、新たな知見を得ることができた。トリンギット族に関しては、歌や踊りを通じて文化を継承している若者へのインタビューを行い、そうした活動を通じて自らのアイデンティティを構築していること、その過程で利用されるモノとしての動物資源が重要である点を明らかにすることができた。 また、西表におけるイノシシ猟に関してもフィールド調査を実施した。このなかで、これまで対象にしてこなかった、内地からの移住者による狩猟についても調査を行い、島内出身者とは異なる方法ながらも狩猟やイノシシの消費活動を通じて土地や地域コミュニティに根をおろしていくような様子が明らかになった。さらに、岐阜における狩猟実践を通じて、経験的な狩猟に関するデータも収集した。 これらのデータに基づき論文の執筆及び、国際学会及び国内学会における発表を積極的に行った。また、市民向けのイベントや講演も行い、広く成果の普及を心がけた。
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