研究課題/領域番号 |
25870070
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小林 美穂 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50630539)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 抗血管新生 / 受容体探索 |
研究概要 |
VASH1結合タンパク質相互作用アレイで候補に挙がった分子において、特に膜分子のうち上位30個のタンパク質について、それぞれのsiRNAを血管内皮細胞HUVECに導入し、VASH1によるGlu-チューブリン増加への影響を検討した。その結果、いずれにおいてもGlu-チューブリン増加を効果的に抑制するものは無かった。これは、標的としたタンパク質の多くが免疫細胞や神経細胞で機能する分子であった為に、HUVECにおけるVASH1の機能には関係しない可能性が考えられた。したがって、血管内皮細胞に発現して機能している分子に絞って検討したところ、アレイスコアが高い物のほとんどが血管形成制御分子であることがわかった。現在、これら分子の阻害がVASH1によるGlu-チューブリン増加に与える影響を検討中である。shRNAライブラリーを用いた網羅的解析に備え、Glu-チューブリン増加を評価するハイスループット解析としてFACSまたはin cell westernを用いた実験系を構築した。エンドサイトーシス阻害剤であるメチルβ-シクロデキストリンで処理したHUVECにおいて、VASH1によるGlu-チューブリン増加が抑制された。したがって、VASH1によるGlu-チューブリン増加には膜上に存在する分子のエンドサイトーシスが必要であることが分かった。VASH1は腫瘍進展を抑制することが分かっているため、癌患者由来マイクロアレイのデータベースを用いてVASH1との関連遺伝子を検索したところ、VASH1との相関が高い分子が1つ見つかった。この分子は膜タンパク質をシェディングする機能を持つことから、VASH1が機能するために必要な膜タンパク質の活性を制御している可能性が示唆された。したがって、この分子を高発現させて検討するための発現ベクターを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VASH1結合タンパク質相互作用アレイで候補に挙がった膜タンパク質の解析において、実際に血管内皮細胞で機能していない分子はVASH1によるGlu-チューブリン増加に関係しないということが分かった。したがってアレイ結果から実際の機能解析に移る際、標的を血管内皮細胞で発現・機能する膜タンパク質に絞ることで無駄な解析を省くことが出来ると確信した。また、中和抗体を用いた解析を加えることで、siRNAによるオフターゲットの影響を除去できると考え、現在検討中である。shRNA ライブラリーをレンチウィルスベクターにより細胞に導入する予定だが、Glu-チューブリン増加を効果的に検出できるハイスループットな解析方法を確立することが出来たため、レンチウィルス使用が許可され次第、すぐに解析を進めることが出来る。ダイナクチン阻害剤(dynasore)およびクラスリン阻害剤(Pitstop)を用いてVASH1によるGlu-チューブリン増加への影響を検討しているが、これら阻害剤それだけでGlu-チューブリンをわずかに増加させてしまうため、明瞭な結果が得られないことが分かった。それゆえに、現在、それ自身がGlu-チューブリン量に影響しないエンドサイトーシス阻害方法を検討中である。VASH1は抗血管新生効果により腫瘍成長を抑制することが分かっている。このことからバイオインフォマティクスを用いた解析を新たに組み込んだ。その結果、VASH1が高発現でも予後が悪い症例で共通して高発現している分子を1つ発見した。この分子は膜タンパク質をシェディングする機能を持つことから、VASH1が機能するために必要な膜タンパク質の活性を制御している可能性が示唆された。したがって、この分子を高発現させるための発現ベクターを構築した。現在、内皮細胞においてVASH1によるGlu-チューブリン増加への影響を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
<VASH1受容体の解析> タンパク質相互作用アレイについては、標的分子を血管内細胞で発現している膜分子に絞り、siRNAだけでなく中和抗体を用いた解析を加え、効率的かつ機能的に解析を進める。shRNAライブラリーを用いた網羅的解析についてはハイスループットの実験系が確立できたので、レンチウィルスの使用申請を早急に進める。また、今回新たにバイオインフォマティクスを用いた解析を組み込み、腫瘍進展の抑制というVASH1の生体内における機能面から関連膜分子を抽出・解析することで、より機能的なVASH1関連分子の同定を進める。これらタンパク質相互作用アレイ、shRNAライブラリーを用いた網羅的解析および今回新たに組み込んだバイオインフォマティクスを用いた解析の全てを同時進行で行い、互いの解析結果を考慮しながら進めることで研究のスピードを上げる。更に、ビオチンラベル転移を利用した解析やin situ PLA(Proximity Ligation Assay)等、近年開発されたタンパク質間相互作用解析方法を積極的に採用し、VASH1受容体の同定を効率的に進める。 <VASH1 細胞内シグナル伝達経路の解明> 受容体探索と同時に、VASH1によるGlu-チューブリン増加に関係する細胞内シグナル分子について検討する。VASH1が細胞遊走を抑制することに焦点を当て、細胞遊走を制御するシグナル分子について、これまでGlu-チューブリンとの関連が示唆されていないものについても積極的に解析を進める。受容体よりも先にVASH1関連シグナル分子が同定された場合、そのシグナル分子の関連タンパク質からVASH1受容体の同定を進める。
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