研究実績の概要 |
ゲノムワイドな一塩基多型(SNP)を用いてヒトの形質と遺伝子との関係を調べるゲノムワイド関連研究は多くの新たな知見をもたらした。ところがこのSNP-GWASによって説明される遺伝率は限られており、大部分の遺伝的な貢献度は現在まで説明できてない。いわゆる失われた遺伝率問題と呼ばれる問題である。複数の遺伝子間の相互作用、あるいは環境と遺伝子間の相互作用の寄与が疑われていた。 平成26年度は申請者が開発した遺伝的相互作用を発見する手法について研究を行ったが、平成27年度は、遺伝的予測問題の検討に着手した。予測モデルの構築は個別化医療の実現に必須であるが、失われた遺伝率問題により、ゲノムワイドSNPを用いても予測精度が充分に得られないことが多々報告されていた。SNPデータは超高次元であり、統計学分野においては、p>>n問題と呼ばれる困難が存在している。申請者のこれまでの変数選択問題における研究経験を活かし、統計手法を工夫することで予測精度の向上が図れるものと予想した。ここで、遺伝的相互作用を考慮した予測へもつながるように、任意次元の変数を取り込める形式を採用した。ひとつの成果として、過去に申請者が開発した統計手法を拡張することで、SNP-GWASを用いた高速な予測手法を新たに開発するに至った。数値実験ならびに実データ適用を通じて、既存手法に比べて高い予測精度をもつことが確かめられた。得られた成果は国際誌へ掲載されることになり(Ueki and Tamiya 2016, Genet Epidemiol)、シンポジウムおよび講演にて研究成果の発表を行った。さらに、研究代表者が一部データ解析を担当した共同研究が論文として出版された。
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