研究課題/領域番号 |
25870075
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
倉橋 敏裕 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00596570)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペルオキシレドキシン / Prx4 / 小胞体 / 蛋白質の酸化的折畳み |
研究実績の概要 |
分泌蛋白質や膜蛋白質が細胞外において正常に機能するためには、小胞体における酸化的折畳みが重要である。酸化的折畳みに障害が生じると、異常蛋白質の蓄積等がひきおこされ、それは神経変性疾患や癌といった疾患の原因になる。 Peroxiredoxin 4 (Prx4) は小胞体でthiol oxidaseとして働き、ER oxidoreductin 1 (Ero1)やProtein disulfide isomerase (PDI)と協調して蛋白質の酸化的折畳みに関与することが近年明らかとなった。しかしながら、その分子機構の詳細や生理的役割についてはほとんどわかっていない。 そこで、酸化的折畳みにおけるPrx4の生理的役割を解明する目的で、我々が作成したPrx4ノックアウトマウスを解析した。これまでの私達の解析から、Prx4ノックアウトマウスは通常飼育下では顕著な表現型を示さないことが明らかになっている。そこで、蛋白質の酸化的折畳みは酸化ストレスに脆弱であるとの考えから、内在的に酸化ストレスの亢進がみられるSOD1ノックアウトマウスをPrx4ノックアウトマウスと交配することによりPrx4;SOD1ダブルノックアウトマウスを作製し、現在解析を進めている。これまでに、野生型および各シングルノックアウトマウスとの比較により、著しい臓器障害を観察したが、さらにある条件によりダブルノックアウトマウスが脆弱性を示すことを見出した。 また、Prx4には転写開始点が異なる2種の転写バリアントが存在するが、これまでに解析している全身性で発現しているフォームとは別に、精巣特異的に発現しているフォーム(Prx4t)に関しても相互作用する因子の検索を行い、候補因子を同定した。これら2種を比較検討することにより、Prx4の生理的役割解明をすすめる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常飼育下では顕著な表現型が観察されないPrx4ノックアウトマウスを、内在的に酸化ストレスが亢進しているSOD1ノックアウトマウスと掛け合わせて酸化ストレスを負荷することにより、シングルノックアウトでは観察されない表現型を観察した。その結果、ある条件に対してダブルノックアウトマウスが脆弱であることを見出した。また、Prx4は転写開始点が異なる2種の転写バリアントが存在するが、これまでに、精巣特異的に発現しているバリアントであるPrx4tに関しても、質量分析器を用いた相互作用因子の検索を行い、相互作用する可能性のある因子の同定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
今回新たに見出したPrx4;SOD1ダブルノックアウトマウスが脆弱性を示す条件下での表現型解析をすすめる。その際、分子レベルでのメカニズム解明にはマウス個体を用いた解析だけでは困難であることから、肝細胞の初代培養系も用いた解析を行う。また、精巣特異的な転写バリアントであるPrx4tの機能解析も合わせて行うことにより、Prx4の生理的役割を明らかにすることを目指す。
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