研究課題/領域番号 |
25870076
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
片桐 洋史 山形大学, 理工学研究科, 助教 (40447206)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アズレン / ターアズレン / アセン / 有機半導体材料 / 双極子モーメント / 分子軌道制御 / 折れ曲がり構造 / π共役系有機分子 |
研究概要 |
アズレン3個を2,6-位で同方向に連結したターアズレンが持つn型特性を説明するために、分子軌道、トランスファー積分、再配向エネルギーを計算した。その結果、LUMOが分子全体に広がっているのに対してHOMOは分子の末端に分布しており、双極子モーメントが分子軌道に大きな影響を与えていることが明らかになった。また、電子輸送に対するトランスファー積分が高い値を示した。一方、再配向エネルギーはカチオン種が低い値でありホール輸送に対する優位性を示した。以上の結果から、ターアズレンのn型半導体特性において分子間の軌道の相互作用が支配的であることが明らかになった。 アズレンの方向が異なる残り3種のターアズレン異性体全ての合成に成功し、有機電界効果トランジスタ(OFET)特性を評価した。その結果、全てのターアズレン異性体においてn型特性の発現が確認され、移動度は最大で0.3 cm2/Vsを示した。さらに、HOMOの軌道が分子全体に広がった異性体はn型とp型の両特性(アンバイポーラ特性)を示した。以上の結果は、分子軌道制御による半導体極性制御を支持しており、半導体材料の新規な分子設計の指針としての利用が期待される。 溶解性と配向性の向上を目的として折れ曲がり型アセンの合成とFET 特性評価を行った。その結果、2 種の折れ曲がり型アセン化合物bent-DNTT,bent-DATT を3 段階の簡便な合成法により得ることができた。また,bent-DNTTはジクロロメタンに対して2000 ppmの高い溶解度を示した。FET 特性の評価を行ったところ、bent-DNTT がスピンコートによる塗布法においてp型半導体特性を示した。以上の結果より、官能基を導入することなくチオフェン骨格が構築する分子の折れ曲がり構造のみによって高い溶解性と分子配向性の両立が可能であることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、全てのターアズレン異性体の合成に成功し、全ての半導体特性の評価を完了している。特に、n型半導体材料としての有用性、ならびに「分子軌道制御による半導体極性制御」という有機半導体材料における新規な分子設計の指針を示すことができた。また、折れ曲がり型アセン類の合成法を確立し2種類の化合物の合成に成功している。さらに、これらの折れ曲がり型アセン類を用いてスピンコート法によって作成したデバイスにおいて半導体特性を得ることに成功している。本結果の一部は既に当初計画していた次年度の計画内容を含んでおり、研究期間内にすべての目的が達成できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、ターアズレンが高いn型半導体特性を持つことを見出し、分子間の軌道の相互作用が支配的であることを確認した。最終年度は、さらに高い移動度を目指してアズレン骨格を拡張したクオータアズレンの合成とファスナー効果を期待した長鎖アルキル基の導入を検討する。また、折れ曲がり型アセン類の溶解性と分子配向性の更なる向上を目指した非対称な折れ曲がりアセンの合成を検討する。さらに、有機薄膜太陽電池への応用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ターアズレン異性体の合成が予定よりも早く進展したため、当初は最終年度に計画していた全異性体の合成と長鎖アルキル基の導入の実施順序を入れ替えて研究を行った。この変更に伴う全計画内容の変更は無く、当初予定していた研究成果の達成が期待できる。 ターアズレンへの長鎖アルキル基の導入に用いる合成用試薬と溶媒を購入する。
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