原発事故の被災地域における低線量放射線被ばくの蓄積が、そこに生育する植物の塩基配列の変異に与える影響についてはほとんど明らかにされていない。本研究では、日本各地に遺伝的に同一な個体が生育するモウソウチクを対象として、様々な放射線量の地域からサンプルを収集し、次世代シーケンサーから得られる大量の塩基配列データによって、生育地の空間線量と塩基配列の突然変異数との関係を評価した。 その結果、空間線量の増加に伴う変異量の増加は認められなかった。したがって、比較的空間線量が高い環境で生育しているモウソウチクであっても、事故後に塩基配列の突然変異を急激に蓄積しているということはないと考えられた。
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