研究課題/領域番号 |
25870103
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
金澤 研 筑波大学, 数理物質系, 助教 (60455920)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 磁性半導体 / スピントロニクス / 走査トンネル顕微鏡 / 表面・界面物性 / 分子線エピタキシー法 |
研究概要 |
本課題では、半導体スピントロニクスにおけるスピン流注入源等への応用が期待される希薄磁性半導体、特にII-VI族半導体ZnTe にCr, Mn等の磁性元素をドープした系を対象とし、走査トンネル顕微鏡 (STM) を用いて磁性ドーパント周りの局所電子状態を調べることで、それらの間に働く磁性相互作用の起源を明らかにすることを目的として研究を行っている。 今年度は分子線エピタキシーで作製した(Zn,Cr)Teを対象に断面STM観察を行い、孤立、および、複数隣接して存在しているCr原子周りの電子状態を詳細に測定し、Cr間に働く強磁性相互作用によってCrの状態がどの様に変化するかを明らかにした。 まず、(Zn,Cr)Te中のCr原子の高分解能STM観察に成功した。その結果を、密度汎関数法 (DFT) に基づく理論計算と比較することで、添加されたCrは、母体半導体ZnTeのZnサイトを置換して存在し、フェルミ準位近傍のエネルギー領域において隣接するTeとta状態を形成していることを示唆する知見が得られた。さらに、その輝点の広がり方の違いから、STM観察によって表面第一層および第二層中に存在するCrを検出および識別できることがわかった。 次に、孤立および複数が隣接する状態で存在するCrを対象に走査トンネル分光測定を行い、それぞれの状態で局所状態密度に対応する微分コンダクタンス曲線形状が異なることを明らかにした。さらに。微分コンダクタンス曲線の形状は、Crの隣接方向・距離に依存して変化することも分かった。DFT計算との対応から、この形状変化は隣接Cr原子間に働く強磁性的な相互作用によるものであることが示唆された。さらに、その形状変化の隣接方向依存性も計算とよく一致ており、この強磁性相互作用の強さがta状態の空間的重なりときわめて密接が関係があるという知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の目標は分子線エピタキシー法で作製した希薄磁性半導体(Zn,Cr)Te薄膜を対象として断面STM観察を行い、その電子状態を調べることで、磁性不純物であるCrが形成する不純物準位および、隣接Cr間に働く強磁性相互作用を単原子レベルで明らかにすることであった。 本年度は、実際にCr原子の高分解能STM観察に成功し、走査トンネル分光 (STS) の結果から試料のフェルミエネルギー近傍にCr由来の不純物準位が形成されており、そのSTM輝点形状からCrは隣接するTeとの間でta状態を形成していることを示唆するという知見が得られた。また、孤立Crと隣接Cr上で測定したSTS結果の比較から、隣接Cr間に強磁性相互作用が働くことによって不純物準位がブロード化することを明らかにした。さらに、そのブロード化の度合いはCrの隣接する方向および距離で大きく異なり、ta準位の空間的重なりの大きさと強磁性相互作用の強さに密接な関係があるという知見を得た。 このことから、当初の目的をほぼ達成できており、当課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の目的は、走査トンネル顕微鏡 (STM) によって希薄磁性半導体 (DMS)中の磁性ドーパント周りの電子状態を詳細に測定することで、未だ明らかとなっていないII-VI族DMSの磁性発現のメカニズムを解明し、強磁性ナノ構造作製へと応用することである。 これまでの研究でCrの不純物準位の詳細をSTMによって明らかにできることが分かってきた。従って、今後はさらなる発展として、キャリアドープした(Zn,Cr)Te、電荷ドープ条件の変化によって磁性元素間の相互作用がどのように変化するかを単一原子スケールで明らかにする。 具体的には、Nドープで引き起こされるといわれるCr2+→Cr3+価数変化による不純物準位のエネルギー位置や軌道形状の変化をSTM観察によって明らかにし、先行研究で報告されているNドープによる強磁性抑制との関連を調べる。 これらの研究でDMSの磁性メカニズムを明らかにした後、本課題で購入済の超高真空3源エバポレータを用いて半導体ZnTe表面に吸着させた磁性元素 (Zn,Cr,Fe等) に対し、STM原子操作によって原子配列を制御することで強磁性ナノ構造を人為的に作製し、その物性を評価することを目標として研究を進めていく予定である。
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