本研究の目的は,小中学生を対象として,いじめ場面の行動における罪悪感と共感性を質問紙調査により測定し,以下の2点について検討することである。第1点目は,いじめ場面において加害,観衆および傍観行動をしてしまった際に,小学生と中学生の罪悪感がどのように喚起されるかについて明らかにする。第2点目は,いじめ場面の行動において喚起された罪悪感と共感性との関連について,小学生から中学生までの発達的変化の様相を詳細に分析することである。これらの目的より,いじめ場面の行動を加害,観衆および傍観と分類し,罪悪感と共感性の観点から解明することができ,従来展開してきたわが国のいじめ研究に新たな知見を提供できる。 当該年度は,本研究の目的にもとづき第Ⅰ,第Ⅱ段階における小中学生の質問回答をあわせ,いじめ場面の行動における罪悪感の特徴,罪悪感と共感性との関連を総合的に分析,検討した。その結果,加害,観衆および傍観行動における罪悪感については小学生の得点が中学生の得点よりも高いことが明らかになった。また,性差についてはすべてのいじめ場面の行動において,小中学生の女子が男子よりも罪悪感得点が高かった。一方,罪悪感と共感性の関連については,いじめ場面のいずれの行動にも共感的関心と視点取得が関連することが小学生,中学生において明らかになった。しかしながら,共感性を構成する個人的苦痛といじめ場面の行動における罪悪感については,小学生において負の相関関係,中学生において正の相関関係が認められた。 以上の結果より,児童期から青年期へと発達する過程で,いじめ場面における加害,観衆および傍観行動の罪悪感は低下し,また,苦痛や不安を感じることがいじめ行動の罪悪感に異なって機能することが示唆された。
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