本研究は,国内および国際寡占市場における賃金契約に関する影響を分析することを目的としていた.特に,2国が存在する国際寡占市場において,自国民や外国民が異なる国の企業の株式を保有しあうという場合において,企業水準の賃金交渉と産業水準の賃金交渉のどちらが各国厚生または世界厚生の観点から望ましくなるのか,また,同時手番の賃金交渉と逐次的な賃金交渉ではどちらが望ましいのかを考察した.この考察により,各国の消費者がどの程度の割合の自国および他国の企業の株式を保有しているのかが,決定的な役割を演じることが分かった.また,賃金交渉と同じ性格を持つ,企業の内部構造や長期的意思決定に関する分析も併せて行った.
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