我々が、光合成土壌細菌のクオラムセンシング機構の解析を行っていた過程で、オートインデューサーp-Coumaroyl-homoserine lactone (pC-HSL)のレセプター遺伝子rpaRに対する相補鎖転写物(アンチセンスRNA)を発見した(asrpaR)。我々は、asrpaRが本菌のクオラムセンシング抑制因子であることを明らかにした。本研究では、asrpaRによるクオラムセンシング抑制の分子機構について解析を行うと共に、緑膿菌のアンチセンスRNAについても解析を進めた。 asrpaRは、約400塩基からなり、rpaR転写物の3’領域において塩基対を形成し、rpaRの翻訳を抑制した。しかしながら、rpaR転写物の安定性には影響を与えなかった。これまで報告されてきたアンチセンスRNAは標的転写物のリボソーム結合部位を含む5’領域において塩基対を形成することで、リボソームやRNA分解酵素の結合に影響を与える。本RNAは、これまで提唱されていたモデルでは説明できない、全く異なる機構で標的転写物の翻訳を抑制していると考えられた。 さらに、我々は、類似したアンチセンスRNAがヒト病原細菌である緑膿菌からも発見した。このアンチセンスRNAは、オートインデューサーN-Butanoyl-homoserine lactone (C4-HSL)のレセプター遺伝子rhlRに対する相補鎖転写物であり、rhlR転写物と塩基対を形成することで、翻訳を抑制することからクオラムセンシング抑制因子であることが明らかとなった。
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