研究課題/領域番号 |
25870116
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
久留島 潤 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50636488)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 腸球菌 / バクテリオシン / 抗菌タンパク質 / ペプチドグリカン分解酵素 |
研究概要 |
腸球菌Enterococcus faecalis(E. faecalis)は、ヒトや動物の腸管常在菌である一方、尿路感染症や心内膜炎を始めとした様々な日和見感染症の原因菌として分離される。新規バクテリオシンBac41は臨床から分離されるE. faecalis株の約半数が産生するバクテリオシンであり、抗E. faecalis活性を示すことから、同菌種間における拮抗現象に深く関与すると考えられている。本研究では、腸球菌感染症における細菌間相互作用を理解するために、Bac41の殺菌機構の解析を行なった。 Bac41の殺菌活性の実体であると思われる2種類の遺伝子の産物BacL1(595 a.a.)とBacA(726 a.a.)の組換え体を、大腸菌を用いた発現系により調製した。組換えBacL1とBacAを用いて、E. faecalisに対する殺菌活性の検討を行なったところ、BacL1とBacAはE. faecalisの殺菌に必要十分な因子であることを確認した。また、BacL1とBacAは協調的にE. faecalisに対する殺菌活性を示し、それぞれ単独では殺菌活性を全く認めなかった。BacL1とBacAはともに共に既知のペプチドグリカン加水分解酵素と高い相同性を示すことから、両者の標的は細菌の細胞壁を構成するペプチドグリカンであることを推定した。そこで、E. faecalis由来の精製ペプチドグリカンにBacL1あるいはBacAを作用させたところ、BacL1単独でペプチドグリカン分解活性を認めた。一方、BacAには全くペプチドグリカン分解活性を認めなかった。 以上の結果から、本研究ではこれまでに、(1)BacL1はペプチドグリカン分解酵素であること、ならびに、(2)生菌に対する殺菌活性にはBacL1だけでなくBacAが同時に必要であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バクテリオシンBac41の殺菌活性の実体である2種類のタンパク質BacL1とBacAについて解析を行った。 平成23年度では、主にBacL1の機能解析において進展があった。BacL1の酵素活性がペプチドグリカン分解であること、およびBacL1分子内の機能ドメインの局在を明らかにした。 一方、BacAの分子機能は現段階において不明である。また、BacAは、BacL1同様にE. faecalisの殺菌に必須であることを明らかにしている。 本研究の目的であるBac41の殺菌機序を理解に至るためには、BacAの分子機能を明らかにすることが不可欠であり、今後の課題である。BacL1に関する解析の成果においては一定の成果を得られていることから、総合的にはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
BacL1とBacAによる殺菌機序と各因子の役割をさらに明らかにするために、両タンパク質の標的因子を同定する。具体的には、標的細胞の細胞壁表面における局在を明らかにするために、蛍光標識体のシグナルを蛍光顕微鏡下で観察する。さらに、BacL1ならびにBacA特異的抗体を用いた免疫電子顕微鏡により両タンパク質の局在を観察する。また、細胞壁あるいは細胞膜に局在するタンパク質との相互作用を検討するために、プルダウン法、ならびに2ハイブリッド法による標的タンパク質の検索を行う。また、Bac41による殺菌に関わる標的細胞側因子を同定するために、Bac41耐性トランスポゾン変異体を解析を行う。
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