研究課題/領域番号 |
25870119
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
坂口 愛沙 群馬大学, 生体調節研究所, 助教 (90608697)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Rab11 / 初期胚 / オルガネラ / 受精 / 線虫 / 膜輸送 |
研究実績の概要 |
受精の前後では,膜輸送システムが受精に連動して変化し細胞内外の劇的な変化に寄与している.当研究室は,酵母からヒトまで高度に保存された低分子量GTPase RAB-11が,線虫生殖腺において様々な膜輸送システムに関与し,受精に連動して局在や機能を変化させることを明らかにしている.しかし,RAB-11がどのようにして局所的に活性化されるか,その時空間的制御については明らかになっていない.本研究では,前年度にRAB-11の新規制御因子を探索する目的でRAB-11結合因子スクリーニングを行い,RAB-eleven-interacting protein-1(REI-1)を同定した.平成26年度は,主に遺伝子欠失変異体を用いてREI-1の機能解析を進めた.まず,野生型およびrei-1変異体におけるRAB-11の局在を比較した.野生型におけるRAB-11は,受精前の卵母細胞ではリサイクリングエンドソーム(RE)やゴルジ体に局在し,受精直前に表層顆粒へ一過的に局在化する.さらに,受精後の初期胚では再びREやゴルジ体へ局在化し,細胞分裂時には分裂溝へ集積する.一方,rei-1変異体におけるRAB-11は,卵母細胞や受精時における局在は正常であったのに対し,初期胚においてREやゴルジ体への再局在化や分裂溝への集積が消失し,局在異常を示した.このとき,rei-1変異体においてもRAB-11を含む膜画分と細胞質画分の比率が野生型と変わらなかったことから,rei-1変異体ではRAB-11が何らかの膜構造には結合できるが,標的オルガネラに局在化できず拡散分布していると考えられる.これらの結果から,REI-1は受精後の初期胚において時期特異的にRAB-11の標的オルガネラへの局在化を制御していることが示唆された.現在は,rei-1の哺乳動物ホモログも含めREI-1の分子機能の詳細な解析を行っている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,スクリーニングによって同定された新規RAB-11結合因子REI-1について変異体を用いて解析を行った.変異体では,卵母細胞や受精時の異常は見られなかったが,受精後の初期胚においてRAB-11の局在が見られたことから,期待通りRAB-11の局在を制御する因子を同定することができた.また,RAB-11の局在・動態観察については,抗体染色を用いた内在性RAB-11の局在観察に加え,蛍光標識したRAB-11と共焦点顕微鏡を用いて生きた線虫個体内でライブイメージングを行うことに成功した.さらに,分画解析によってRAB-11を含む膜画分と細胞質画分を分離することができ,REI-1の機能を知る上で重要な知見が得られた.現在は,哺乳動物ホモログも含めてREI-1の機能について生化学的な解析を行っており,当初の計画の進行はおおむね順調といえる.
|
今後の研究の推進方策 |
本研究のこれまでの解析から,新規RAB-11結合因子として同定したREI-1は,不活性型であるGDP結合型RAB-11やnucleotide-free型RAB-11に強く結合することが明らかとなっている.また,変異体を用いた解析から,線虫初期胚においてREI-1がRAB-11の標的オルガネラへの局在化を制御していることが示唆された.これらの結果から,REI-1はRAB-11の活性化因子であるGEF(guanine nucleotide exchange factor)である可能性が考えられる.そこで,REI-1の組換えタンパク質を精製し,RAB-11のGDP/GTP変換効率に影響を与えるか調べる.また,REI-1はヒトにもホモログが存在するため,ヒトホモログについてもヒトRab11との関連について検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究によって同定された新規RAB-11結合因子REI-1にはホモログとしてREI-2が存在しており,両遺伝子について同時に解析を進めたため,当初の予想以上に時間が必要となった.よって,次年度に使用額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
これらの使用額に関しては,当初の計画通り生化学的解析や哺乳動物ホモログの解析に用いる予定である.
|