研究課題/領域番号 |
25870120
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
加藤 有希子 埼玉大学, 教育企画室, 准教授 (20609151)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 色彩療法 / オーラ / 神智学 / スピリチュアリズム / ニューエイジ / エネルギー一元論 / セラピー文化 / 自己啓発思想 |
研究概要 |
研究初年度にあたる平成25年度は、色彩療法、オーラ、ニューエイジ、スピリチュアリズム、自己啓発本などの主題を学問的に深く吟味するために必要な書籍を大量に購入し、順次読み進めていった。分野は19世紀からの一次資料に加え、美学、社会学、宗教学、心理学、哲学など多岐にわたる。一部の電子機器の購入以外の初年度の経費のほぼすべてを、消耗品図書の購入に充てた。当初は入手できない一次資料を調査するために、海外旅費を計上していたが、実際にはこの分野の書籍は現在人気が高く、多くが古い文献も含めて現在でもリアルタイムで印刷されているため、旅費を節約して大量に書籍を購入できた。この分野の社会全般的な関心の高さを実感するとともに、予定より大量の資料を購入した分、この分野に関する知識、見識をかなり深めることができた。 初年度は、科研終了時の平成27年度末に出版を計画している単著の構成に沿って、俯瞰的に研究を進めることを目指した。具体的には①オーラソーマ、オーラライトなどの現代の色彩療法、②色彩療法とオーラ言説先駆者C・W・リードビーター、③19世紀末からのエネルギー一元論、④ニューエイジとセラピー文化、⑤ナラティヴ論、⑥黒と虹の解釈史の6つの分野について一次資料と二次資料を収集し、読解し、初動研究を進めた。ほぼこの章立てを、出版予定の単著の構成にする予定である。 平成25年度半ばにまず初動研究の成果をブリヂストン美術館と獨協大学で発表し、末には、上記の概要を、発表時間1時間半にわたる長時間の学会で発表した。研究としてはかなり進展しており、平成26年度には、オーラ言説の歴史と現代色彩療法との関連を論じた1本の論文と、自己啓発本と積極思考を批判的に考察する1本の論文の、少なくとも2本の論文の出版を予定しており、現在、執筆中である。また27年度末の単著の出版に備え、26年度は出版社との交渉を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述のように、関連分野に関する一次資料、二次資料を当初の予定よりかなり多く購入できた。当初予定していた海外出張旅費をおさえて資料購入に充てた分、時間と経費の節約になり、27年度出版予定の単著の構成に沿って、研究を大幅に進め、知識を深めた。研究業績としては、平成25年度7月に二本の招待講演を行った(ブリヂストン美術館、獨協大学)。そこで研究代表者の以前からの研究である新印象派点描のプラグマティックな使用と、現代色彩療法とのつながりを明らかにした。さらに年度末には、27年度末に出版を計画している単著の構成に従い、概要を詳細に検討する長時間の学会発表を行った。上述のように俯瞰的な研究を進めてきたため、今後の論文、著作執筆の核となる様々な問題を抽出できた。また26年度に執筆する少なくとも論文への資料準備と読解、執筆準備をすすめ、さらに26年度に予定しているイギリス神智学協会でのオーラ言説の調査の準備も開始している。その点で、「おおむね順調に推移している」と評価できると考えている。 ただしニューエイジやスピリチュアリズムといった議題を嫌うアカデミックな慣例も依然根強く、発表できる場が現在のところ限定されているのが残念である。そのような風潮の批判的検討も含めて、研究代表者はできるだけ発表の機会を模索していく予定である。また最終的には単著の出版を通じて、このような分野の高度に学問的な研究を進展させるのに、ぜひとも貢献したい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に単著執筆の基盤となる資料収集、ならびに発表原稿の執筆ができた。 平成26年度は、25年度に執筆した発表原稿をもとに、各章の研究を論文として出版する準備を進める。まずオーラ言説の19世紀欧米での起源と、現代色彩療法との関係をあきらかにする論文を一本執筆する。これは25年度末に発表した埼玉大学の学会astraestheticaが発行する論文集に寄稿予定である。原稿締切は平成26年8月末である。また自己啓発思想と積極思想に関する批判的な考察を立命館大学生存学研究センターが発行する学術誌『生存学』に投稿予定である。原稿締切は平成26年度内である。さらに平成27年度末の単著執筆に向けて、出版社との交渉に入りたい。現在、交渉に向けて具体的な準備を進めている。 平成26年度は、25年度と同様、できる限り国内で資料収集し、時間と経費の節約につとめ、その分、実質的な分析、研究に労力を費やすようなるべく努力する。ただし年度内に一度、イギリス神智学協会に19世紀のオーラ言説の発生を調査するために、渡航を予定している。現在、図書館司書と連絡をとっており、資料の内実把握と調査日の決定を話し合っている。
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