研究概要 |
ワーキングメモリとは,視覚情報も含めて課題の遂行に必要な情報を一時的に保持しながら処理を行う容量に限界のある記憶システムのことである。運動技能の学習や遂行場面では,外界の状況に合わせて,全身を協応的にコントロールしなければならないため,処理しなければならない外的及び内的な情報は膨大である。もし,ワーキングメモリの容量が極端に小さい場合,運動課題の学習及び遂行中に過剰負荷状態に陥ってしまうため,高い学習成果及びパフォーマンスは期待できない。したがって,運動不振を呈する者が,運動が苦手な理由の1つとしてワーキングメモリの容量が小さいことが仮説的に考えられる。そこで,平成25年度は運動不振とワーキングメモリの関係を検討することを目的とした。 女子大学生7人を対象し,AWMA (Automated Working Memory Assessment)の視空間に関する2つのテストDot Matrix (VSSTM; Visuo-Spatial Short-Term Memory, 視空間短期記憶)とSpatial Recall(VSWM; Visuo-Spatial Working Memory, 視空間ワーキングメモリ)及び大学生版運動不振尺度を実施した。 AWMAの2つのテスト(VSSTM, VSWM)と大学生版運動不振尺度の2つの下位尺度(身体操作力,ボール操作力)の相関を分析した結果,VSSTMと身体操作力の間でr=.534,VSSTMとボール操作力の間でr=.393,VSWMと身体操作力の間でr=-.766,VSWMとボール操作力の間で,r=-.829の相関が認められた。現時点では被験者数が少なく,運動不振とワーキングメモリ容量との関係について明確な結論を下すことができないため,追加の検討が必要である。
|