研究実績の概要 |
運動技能の指導―学習場面では,なかなか技能の向上が認められない学習者が見受けられる。そのような学習者は「運動不振」と呼ばれるが,彼(彼女)らの技能をいかに向上させるかが指導者にとって重要な問題となる。 平成27年度は,運動不振学生の予測技能を検討する計画であった。予測技能の検討のために,時間的遮蔽法を用いたビデオ映像を作成した。時間的遮蔽法とは,実験参加者に呈示される動作の映像を特定の時間条件で遮蔽し,それ以降の映像を呈示しないで実験参加者に最終的な結果(ボールの落下地点等)を予測させる方法である。バレーボールのサーブレシーブ場面を想定し,映像にはそのサーブ動作を用いた。遮蔽条件は,t1:テイクバック終了後,t2: 肘の挙上後,t3:ボールと手のコンタクト時, t4:フォロースルー終了後,t5: 遮蔽なしの5条件であった。この予測課題では,各遮蔽条件での参加者の予測落下地点と実際の落下地点との差(ズレ)が少ないほど予測技能が高いことを意味する。 運動不振学生との比較対象としてバレーボールの競技経験のない大学生7名を対象に,この予測課題を用いた実験を行った。その結果,縦方向については時間経過に関わらず予測の正確性があまり向上しない(誤差180mm程度)ことに対して,横方向についてはt3(ボールと手のコンタクト時)を境に,誤差200mm程度から80mm程度まで予測の正確性が大幅に向上するという結果であった。 平成27年4月から平成28年3月まで大学のサバティカルを利用してイギリスで研究を行ったため,日本で運動不振学生を対象とした実験ができなかった。現在は帰国しているため,至急,実験を遂行する予定である。
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