研究課題
本研究の目的は,ウィントシグナルに作用する新たな天然化合物を見出し,その作用機序を解明することである.培養細胞を用いたルシフェラーゼ試験により,当研究室で構築した植物および放線菌抽出物についてスクリーニングを行い,ウィントシグナルを阻害,または活性化するものを選択し,活性成分の探索を行った.ニガキ科Eurycoma longifoliaより単離したβ-carboline型アルカロイドである9-hydroxycanthin-6-oneは,IC50値6.8μMにおいてウィントシグナルを阻害した.ウェスタンブロットによる関連タンパクレベルの解析により,その阻害メカニズムはCK1α非依存的なGSK3βの活性化であることが示唆された.さらに本化合物はゼブラフィッシュ胚においても阻害作用が確認でき,ウィントシグナルの標的タンパクであるzic2aおよびmitfを減少させた.センダン科Azadirachta excelosaからは新規リモノイド1種とともに,7種のリモノイドを阻害化合物として単離した.とくに7位に水酸基,14,15位にエポキシ基をもつ4種の化合物が強い阻害作用を示した(IC50値120-300 nM).このうちtrichilin Hについて検討を行ったところ,本化合物はウィントシグナルの転写活性化因子β-cateninを減少させなかったが,本シグナルの標的タンパクc-mycを減少させた.そのほかキョウチクトウ科Tabernaemontana divaricataからはイボガ型アルカロイドを,アオイ科Hibiscus ficlneusからはリグナンを,オオバコ科Scoparia dulcisからはジテルペノイドを活性化合物として単離,同定した.
これまでの研究成果および本研究課題の成果により,2014年日本生薬学会 学術奨励賞を受賞した.
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 謝辞記載あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち招待講演 3件) 備考 (2件)
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