研究実績の概要 |
脳卒中患者の歩行再建には、歩行量をはじめとした下肢の運動量が必須であることが知られているが、短時間で行うことのできる麻痺側体幹・下肢の選択的な高強度トレーニングも一定の効果を有している可能性がある。これまで前年度、前々年度において、健常者を対象とした検討によりkneeling-gait(膝歩き), scooting(長坐位いざり)について、体幹・下肢近位部の筋活動を効率的に、安全に動員できる運動課題であることを明らかにした。そこで本年度は、scootingを介入課題として選定し、脳卒中患者を含めた要介護高齢者を対象として予備的検討を行った。対象は通所リハビリテーション施設に通う要介護高齢者46名(介入群23名、コントロール群23名)とし、歩行機能評価としてTUGを介入一週間前、介入前、介入後で実施した。介入期間は2週間とした。結果、最終評価まで可能であった40名(介入群23名、コントロール群20名)について、介入前後でのTUGに有意差は認められなかった。しかし課題の実施状況が良好な患者においては改善が認められた症例も散見された。本研究の実施過程において患者の身体機能のみならず、意欲などの精神的状態、集中力、円背などの変形の問題から統一的な課題実施が困難であり、これを改善する必要性が明らかとなった。一方、いざり移動課題とのマッチングが良く、積極的に運動量を確保することができた症例は、TUG成績の改善が改善する可能性が示されており、今後はどのような患者がいざり移動の課題に適応しやすいのか検討の意義があると考えられた。
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