研究課題
6層構造から成る大脳皮質における皮質層間情報処理のメカニズムを理解する為に、マカクザルの下側頭皮質において全ての皮質層から神経活動の同時記録を行い、皮質層間でどのような情報伝達が行われているかを調べた。具体的には、皮質に対して垂直に刺入した縦型多点電極を用いて、図形間対連合記憶課題を遂行中のマカクザル下部側頭葉の皮質全層より同時に記録された神経活動について、電流源密度解析により皮質第4層に位置するチャンネルを同定し、それを元にして各皮質層に位置するチャンネルを推定する事で、各皮質層のmulti-unit activity(MUA)間の相互作用を解析した。特に手がかり刺激呈示中における、皮質浅層と皮質深層の間の相互作用、及び皮質深層内の相互作用に着目し、Granger因果性解析を用いて相互作用を方向別、及び周波数別に算出し、局所回路におけるニューロン間相互作用を司るガンマ帯域を中心として、上記それぞれのMUA間相互作用の特性を抽出・比較した。その結果、皮質浅層から皮質深層へのGranger 因果性は80-140 Hzの高ガンマ領域に、一方皮質深層内のGranger因果性はそれよりも低波長側の30-80 Hzの低ガンマ領域に、それぞれ特化して信号が見られる事が明らかになった。さらにこの相違は、相互作用を計算した2つのチャンネルの内、Granger因果性のターゲットに当たるチャンネルを共通にして計算した場合でも同様であった。この事から、皮質浅層から皮質深層への情報伝達と皮質深層内における情報伝達は、互いに異なる特定のガンマ帯域の信号を介して行われ、従ってそれらの情報伝達が皮質深層において共通の局所領域へと収束する場合、皮質深層から入力した信号と皮質浅層から入力した信号が周波数帯域の相違によって識別されるメカニズムになっている事が示唆された。
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Neuron
巻: 86 ページ: 840-852
http://dx.doi.org/10.1016/j.neuron.2015.03.047