研究課題/領域番号 |
25870143
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 進介 東京大学, 学生相談ネットワーク本部, 講師 (10633167)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抑うつ症状 / 思春期 / 縦断調査 / 社会関係 |
研究概要 |
思春期後期は、社会関係を発展させる一方、精神疾患の有病率も急激に増加する時期で、大学生までに8人に1人が精神疾患を患うか、罹患した経験を持つ。大学生活は、新たに構築する社会関係を利用してライフイベントに対応し、本人の自尊心を高め、自我を確立させる過程として重要な場である。本研究では、大学というコミュニティにおいて社会関係の発展が、精神疾患の予防・軽症化・早期回復につながることを定量的に証明し、社会関係構築の正の側面を見出すことが目的である。本研究によって、レジリエンスやソーシャルキャピタルの重要性を定量的に証明し、大学精神保健・支援機関のモデルケースとなることを目的とする。 平成25年度は、都内大学の通学する大学生148名の第一期調査を完了した。91名のデータを用いた予備的解析結果では、32%の被験者が精神的に不健康と感じており(WHO-5 精神的健康状態表)、54%の被験者が抑うつ・不安を感じていることがわかった。しかし、1か月後の調査で同様に閾値上の不健康を感じているものは13%であった。 過去の検討では、20代の抑うつ症状を呈する割合は10―20%といわれており、今回の0,1か月で継続して精神的不健康と回答した割合と一致する。大学生はテスト、進学等で精神的不健康であると回答する学生が多いが、1か月後の調査と組み合わせることで、慢性的な精神的不健康かどうか検討することができた。平成26年度は新規被験者数を増やすとともに、1年後の追跡調査を実施し、これらの慢性的な精神的不健康に関与する因子を見出す予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の健常対照群の被験者目標100名を超えて調査ができており、想定以上に順調に推移している。患者群は現在追加の調査を行っていないが、東大保健センター精神科で同一の質問票の一部を採用しており、今後さらに計画的な追跡研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
健常対照群は予定の250名の登録を完了し、追跡調査の準備を行っていく。患者群はデータ取得を開始する。追跡調査について、第一陣90名のデータがそろった時点で予備解析を実施していく。 指標については、本研究採択後に精神疾患へのスティグマ(偏見、差別)研究を行っている研究者(安藤俊太郎、山口創生)と共同研究することとし、本研究の質問指標の一部にスティグマ関連指標を挿入し、調査終了後にスティグマ解消戦略のための30分程度の介入を追加で実施している。そのため、平成26年度実施予定である1年後の追跡調査でもスティグマ関連指標を実施する予定である。 また、平成26年度より、新学術領域研究(公募研究)「後期思春期のメタ認知成熟過程を検討するマルチモダリティ脳画像計測」を実施することが決まったため、本研究の対象者に追加して研究のお願いをし、MRI画像、母への調査を実施予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は国際学会に参加しなかったため、旅費が当初の予定より大幅に少なかった。研究自体は予定より順調に遂行しており、人件費・謝金、その他の経費が当初の予定に比べ超過した。 平成26年度は本研究の遂行を引き続き行っていくと同時に、国際学会参加も予定していることから、平成25年度未使用分と合わせて、当初予定より多く請求したい。
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