研究課題/領域番号 |
25870144
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久本 洋子 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (60586014)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 花成制御遺伝子 / リアルタイムRT-PCR法 / タケ類 / 一斉開花 / モウソウチク / ジェネット解析 |
研究概要 |
1.モデル植物で知られる花成制御遺伝子のタケ類の相同遺伝子の発現解析 2004年および2008年にそれぞれ一斉開花を起こしたモウハイチクおよびトウオカメザサを材料に、花成促進遺伝子FT、SOC1、FCA、花成抑制遺伝子TFL1/CEN の相同遺伝子について各器官における発現量の年次変化を定量的リアルタイムRT-PCR法によって解析した。その結果、FTは葉で、SOC1は全組織で、TFL1/CEN は茎頂分裂組織で発現するというモデル植物の既往報告と一致した発現パターンを示したことから、タケ類の一斉開花過程にも花成制御遺伝子が関与することを示唆した。 2.mRNAの網羅的解析によりタケ類に特異的な一斉開花関連遺伝子を探索するためのサンプリングと材料の維持管理 材料は東京大学千葉演習林に系統保存されているモウソウチクを使用した。このモウソウチクは67年の開花周期が確認された株の実生である。2013年に出稈した稈3本を選抜し、7月より毎月一度、正午に葉を採集し、ただちに固定液に浸して-80℃の超低温冷凍庫で保存した。さらに24時間の変動を調べるため、ある1日について2時間おきに葉を採集し同様に保存した。今後、これらのサンプルから日周および季節的に発現量が変動する遺伝子を探索する予定である。 また、材料の健全な維持のため、試験地内の稈の分布と遺伝的組成を把握することで、クローン構造を考慮した管理指標を作成した。まず、全稈の毎木調査を行い位置図を作成した。次に、全生存稈からDNAを抽出し、モウソウチクおよびササ類で開発されたマイクロサテライトマーカーを使用して各稈のジェネット識別を行った。その結果、少なくとも27個のジェネットが存在することが明らかになったため、間伐時には稈数の少ないジェノタイプを絶やさないように同一ジェノタイプの稈が集中分布している箇所から抜き切りすることを推奨した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「2.mRNAの網羅的解析によりタケ類に特異的な一斉開花関連遺伝子を探索するためのサンプリング」について、申請時ではモウハイチクとトウオカメザサという2種のタケ類を材料とする予定であったが、これらのサンプリングが採集時刻を考慮していなかったため時間変動遺伝子の材料として不適であることが分かった。一方、申請者が所属する東京大学千葉演習林では開花および更新の履歴が詳細に記録されているモウソウチク試験地が系統保存されている。そこで、時間変動遺伝子の発現解析の材料をそのモウソウチクに変更し、季節的変動を解析するために月に一度のサンプリングを実施することに変更した。以上のことから、平成25年度はサンプリングのみを実施し、mRNAの網羅的解析は平成26年度に実施することとなった。 また、将来的に長期に系統保存するべきモウソウチク試験地の管理状況が悪かったことから、健全な維持のための管理指針を作成することとなり、平成25年度は稈の分布と遺伝的背景の解析に時間を費やしたため、本研究が遅れる結果となってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
特定の稈から1年間毎月正午に採集した葉サンプル、および、ある1日について2時間ごとに採集した葉サンプルを用い、次世代シークエンサーによるmRNAシークエンシング解析を実施する。まず、葉サンプルからRNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社)を用いて全RNA抽出を行い、北海道システム・サイエンス社へmRNAシークエンシング解析を受託依頼する。データをバイオインフォマティックス手法を用いて解析し、採集時期が異なるサンプル間で特異的に発現量の異なる遺伝子領域を選び出し、データベースに登録されている既存の配列と相同性を検索したのち、遺伝子機能予測を行って、季節的に変動する時間遺伝子を推定する。得られた時間遺伝子の配列からプライマーを設計し、リアルタイムRT-PCR法で発現解析を行う。 また、67年開花周期、15年開花周期、未開花のモウソウチク系統の葉からDNAを抽出し、北海道システム・サイエンス社へDNAシークエンシング解析を受託依頼し、1塩基多型の突然変異をもつ時間関連遺伝子を探索することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に材料とする予定であったサンプルが、採集時に採集時刻を考慮していなかったことが判明したため、時間関連遺伝子の解析には不適であることが分かった。一方、申請者が所属する東京大学千葉演習林には開花および更新の履歴が詳細に記録されているモウソウチク試験地があるため、材料をモウソウチクに変更した。 時間変動遺伝子の季節変動を追跡するため、平成25年度はモウソウチクの月に一度のサンプリングを実施した。そのため、予定していたmRNAの網羅的解析は平成26年度に回すことになった。 平成25年度に1年間毎月採集した葉サンプルを用い、次世代シークエンサーによるmRNAシークエンシング解析を実施する。解析は北海道システムサイエンス社へ受託依頼するため、当該助成金の未使用分は平成26年度の受託解析に使用する予定である。
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